日本の大学生の就職活動

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突然ですが、「日本の大学生の就職活動は、行き詰まっている」と思っています。

(中略)大学を卒業する前から始まる、「新卒一斉採用」というシステム。一斉に同じ格好(リクルートスーツ)をして、SPIの試験勉強(つるかめ算とか……)をして、大学の授業をさぼって出かける会社説明会。
その影響で成立しなくなる、大学の教育研究。
そんな苦労をした割に、「想像していたのと違う!」……と、すぐ辞めてしまう新入社員。

(中略)

この現状、一体、誰が幸せだというのか。
○クルート社を初めとする就職関連企業や、人材紹介会社、派遣会社などを除いて、みんなが不幸になっているんじゃないかと思うのですが。

行き詰まっている? 日本の大学生の就職活動 (大学プロデューサーズ・ノート 【早稲田塾】)

「大学の授業をさぼって出かける」と断言している辺り,辛辣で痛烈な意見.いいぞ.もっと言ってやれ.早稲田塾のブログは初めて見たけど,面白いね.リーダーに登録しようかな?このブログで主張されている早稲田塾の公式見解ではない執筆者個人の見解に激しく同意したい.就職活動早期化について怒っている人たちはみんな同じ問題意識を持っていると思う.

学生の求めに応じる形で大学も3年生から就職ガイダンスなどを開催しているが、発表の当番の学生がゼミを欠席するなど、教育に支障が出ているという。

中日新聞:採用活動早期化、是正を 大学側が経団連などに要請:社会(CHUNICHI Web)

全くその通りです.先の長い人生を見たときに,いいところに就職したいという気持ちは大変によくわかるし,そのために就職活動に力を入れたいのはよくわかる.だから,就職活動を自粛しろとは到底言えないが,本命も滑り止め(語弊があるが)も同様にして活動している.しかも,「おまえ,そこ,入る気ないだろ」という企業を「練習」という名目でいっぱい受けていたりするから,どうなのかなぁと思う.それはそれで.就職活動はそれでいいのかもしれないが,何度も述べているように,卒業を前提に就職活動をしているのだから,卒業できなくて話にならない.なのにも関わらず,就職活動には力を入れて,卒業研究やゼミには「就活だから」と免罪符でも持ったかの如くにいけしゃぁしゃぁとやらない理由を正当化する.勘違い甚だしい.理由があって休むのは構わないが,休んだ分を取り戻さないのであれば,評価対象にならないので,単位を落としてしまえばいいのだ.そして,卒業できなくなってしまえばいいのだ.それは卒業研究やゼミという科目の評価としては至って正当なものであり,「就職先が決まっているから卒業できないと困る」という感情的な意見とは全く異なる.そうなるであろうことを容易に予測できるであろうに,「その対策を全く打たないような学生を採用したのですよ,あなたの会社は」と痛烈に言ってやりたい.こうなったのはあなた方の所為だと.

国大協理事の平野真一・名古屋大学長は「採用活動は4年の7月以降にしてほしい」としたうえで「企業が求める人間像として挙げるのは明るさや協調性。こういう学力を、というのはない。大学関係者として悔しい」と話している。

中日新聞:採用活動早期化、是正を 大学側が経団連などに要請:社会(CHUNICHI Web)

国大協の平野真一教育研究委員長は「貴重な学びの時間が奪われている。十分な教育を受けずに学生が社会に出るのは国家の損失だ」と話している。

授業にならない! 「青田買い」是正を 大学3団体、企業側に要請 - MSN産経ニュース

最早,大学教育の完敗と言えるだろうか.何のために大学に入ったのかがわからない.大学は就職活動を優位に進めるための最終学歴を得るためであり,大学で受ける教育には全く興味がないということなのだろうか.大学は最高学府として優れた教育と充実した研究の場を提供し続けることのみならず,社会人に相応しい人格者を育て上げることも使命としてあるだろうに,それすらも許されないということなのだろうか.

要望したのは国大協のほか、公立大学協会と日本私立大学団体連合会。書面では、(1)卒業学年当初や3年以下の学生に対する実質的な採用選考活動を慎む(2)採用活動は可能な限り祝休日や長期休暇に行う(3)正式内定日は卒業学年の10月1日以降-の3点を求めた。

授業にならない! 「青田買い」是正を 大学3団体、企業側に要請 - MSN産経ニュース

まず(1)について.これは恐らく,無理.現状がそれを表していて,採用選考ではないセミナーだとか勉強会だとか銘打ってあって,実際にはそれに参加していないとエントリーすらできないとか,そんな感じらしい.また,3年夏頃にインターンと呼ばれるプレエントリー的なものがあったりして,手を変え品を変え名前を変え,採用選考活動はどんどん早期化しているといえよう.オレが学部生だった頃なんて,インターンなんてなかったように記憶しているが・・・.どうだったかなぁ・・・.次に(2)について.これも無理だろう.休日出勤をしろと言っているようなものだ.受け入れ難いだろう.最後に(3)について.倫理憲章で内定公布日は10月1日以降になっていませんでしたっけ?倫理憲章を守らない企業をどうするのかって話かな?あんまり意味がないように思えるけど.というわけで,残念ながらこの要望は受け入れられなさそうな気がします.悲しい.

同じように,この一連の記事について書かれているのが,有名な5号館のつぶやき

学部の3年生というのは、ようやく大学らしい授業が始まる時期で、理系だと実験なども多くなりもっとも忙しいのが3年生です。その時期に就職活動で時間が 取られるということは、就活をする学生も採用する側の企業も「就職のためには大学での学問は必要ない」と判断しているということにもなります。しかし、大 学教育のもっとも充実したところをスキップするというのは、今の大学カリキュラムのままだと、学生も企業も「損をする」ことになると思います。

5号館のつぶやき : 大学生の就職活動: 1年生から始めさせてはどうでしょう

ゆとり教育の影響がどうのこうので,大学は規定通り15週しっかり授業をやれあーだこーだと文科省言っているにも関わらず,実際は企業も学生も大学教育を必要としていない皮肉.だったら,大学教育者はそういう学生に対して,教育を放棄して差し上げたいものだ.如何に我々が無力であるか.悲しい.

そこで、どうでしょう。ちょっと荒療治ですが、大学生も1年生から就職活動をカリキュラム化して、授業の一環として行うようにしてしまうということを検討しても良いのではないでしょうか。

5号館のつぶやき : 大学生の就職活動: 1年生から始めさせてはどうでしょう

なかなか面白いアイディアである.1年生から始めることがいいかどうかはわからないが,プレ卒研としてのゼミがあるかのように,プレ就活のためのフェーズがあってもいいかもしれない.大学にとっても,学生が良い就職ができるように支援することはやぶさかではないだろう.

まとめ:
就職活動の早期化はダメ.早々に内定(内々定)を出して,学生を慢心させて,卒研に気合いが入らない状況にするのもダメ.大学が教育機関だと認識して!

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コメント(2)

 トラックバックをありがとうございました。私ももちろん、今の就職活動のありようが良いとは思っていないひとりです。どうすれば良いのかと考えた時に、今の企業のやっていることは大学1年生を採用しようとしていることと同じなのだと気がついてもらいたくてアイディアをひねり出してみました。同様に、多くの学生は企業に就職するために大学に入学してくるということを無視している大学のカリキュラムに対しても自省の意味を込めています。現実的な提案というよりは、これを機会に議論が巻き起こることを期待しております。
 これからも、よろしくお願いします。

コメントありがとうございます.就活の早期化が叫ばれている昨今ですが,就活始動が早期化するだけで,内々定が出る時期は一昔前と変わっておらず,就活が長期化していると感じています.
優秀な学生を採用したいと考える企業の立場は理解できますが,その結果が就活の早期化で,このような現状になっているのは,企業も大学も潔しとしていないのではないかと思っています.少なくとも,大学は潔しとしていないのが,現状でしょう.
企業にとっても大学にとっても,なんといっても学生にとって,もっとも有効で有意義な就職活動が出来るように,多くの人に議論されることを期待しています.
今後ともよろしくお願いいたしますm(__)m

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