日本人なら知っておくべき復号化のこと

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ホッテントリメーカーで9userです.現実的です.

そろそろ言っておくか.「暗号化」に対して「復号化」っておかしすぎるんだよ.1人1人が注意して,徐々に啓蒙していくしかあるまい.ハッキリと言おう.「復号化」はおかしい.

CA391398.JPG

世界的名著であるApplied Cryptographyとその和訳本である暗号技術大全を参考にしつつ,説明していこう.ちなみに,2冊とも私物として持っている.もっと言えば,暗号技術大全は衝動買いだ.

メッセージ(message)は平文(plaintext)だ(ときにはクリアテキスト(cleartext)とも呼ばれる).内容を隠すような形でメッセージを偽装するプロセスを,暗号化(encryption)という.暗号化されたメッセージは,暗号文(cyphertext)だ.暗号文を平文に戻す作業が,復号(decryption)だ.

暗号技術大全 p.1 ll.3-5

この説明が全てを示しているのだが,それではこのエントリーの意味がないので,もう少し説明.「暗号化」と呼ばれる行為は,「平文」を「暗号文」にすることを指す.言い換えれば,「平文」を「暗号文」にする行為を「暗号化」と呼ぶ.ならば,その逆作業はどうなるか.「暗号文」を「平文」にする行為なのだから,「平化」ではないのか.常識的に考えて.仮に,この行為が「復号化」だとするならば,「暗号文」は「復号文」になって然るべきではないのか.ほら!論理的に考えて,おかしいだろ.そうなんだ.だから,「復号化」ではなく「復号」なのだ.「復号」と呼ばれる行為は,「暗号文」を「平文」にすることを指しているのだ.だから,「暗号化」に対する言葉は「復号」であって,「復号化」では有り得ない.

ところで,encryption(暗号化:名詞)とdecryption(復号:名詞)が対で,動詞にするとencryptとdecryptが対になる.しかし,ここで似たような別の言葉がある.

ISO7498-2規格に従いたいなら「encipher」「decipher」という用語を使おう.

暗号技術大全 p.1 l.7

encryptとencipherは同じと考えていいと思う.オレはencryptを使うけど.復号に関しても同じだ.ただ,個人的な印象としてはdecipherは「解読」に感じる.感じるだけで,正しいかどうかは分からない.

折角なので,「解読」についても.「暗号文」を「平文」に戻す行為で,正規の手段に基づいているものは「解読」とは言わない(と思う).「解読」というのは英語ではcryptanalysisと呼ぶ.「解読」という行為は,「暗号文」を「平文」に戻す手順が正規のものではなく,解析的に行われる.なので,「復号」と「解読」は区別して使わなくてはいけない.

ちなみに,認証分野ではもっと厄介なことがあって,authenticationとauthorizationとidentificationとcertificationを使い分けねばならない.日本語にしてしまうと似ているものには,confirmationとvalidationとverificationもある.難解だ!

まとめ:
「暗号化」に対する言葉は「復号」.「~化」って言いたいなら「平化」で.でも,「平化」って意味がわからないし,日本語的解釈だから,やっぱり「復号」で.「復号化」は間違いなので,使わないように!

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コメント(5)

結城浩『新版暗号技術入門――秘密の国のアリス』
http://www.hyuki.com/cr/
だと「復号化」ですね. 理由は暗号化・復号化と揃えるためと旧版では書かれていました.

ところで「復号化」が気持ち悪いのは, 黎明期に「復号」とした所為だと思います.
最初から「復号化」だったら案外それで広まっていたんじゃないでしょうか

> 186さん
コメントありがとうございます.
しかしながらやはり「~化」であるので,「復号化」には違和感があります.
「~化」は「~という状態にする」なので,「復号化」では「復号という状態にする」という意味になってしまい,plaintextは復号文となり,違和感が残ります.
「暗号化」に対して逆作用に必ずしも「~化」を当てなくてもいいと思っていて,無理に当てはめるなら状態を考慮して「平化」が正しくなるのかなぁと思っています.
もしくは「暗号文」を「復号化」したものは「復号文」で,それは「平文」と同じであるとすればいいかもしれません.
一番違和感を感じているのはこの部分で,どうにも日本語では収まりが悪く感じられます.

> ところで「復号化」が気持ち悪いのは, 黎明期に「復号」とした所為だと思います.
個人的には「復号」と訳したのは適切だったと思います.
英語との対応を考えると「復号化」が適切に思えますが,日本語として違和感があるので「復号」としたのではないかと推測します.

そもそも英語では"en-"と"de-"の関係なので,そのまま日本語にするのは難しいです.

>plaintextは復号文となり,違和感が残ります.
特に問題ないと思います.
なぜなら,論文書くとき特に認証等に使う場合は
平文をmとするとC = E(m)と暗号文を表し,
m' = D(C)として,わざわざ復号した物と元の平文は
違う事を表しませんか?で,最後にm = m'のとき?とか
これは,まさしく
 >「暗号文」を「復号化」したものは「復号文」で,それは「平文」と同じである
ってことでは?

という,自分も暗号化に対して復号といいますが.

それはそれで納得できますが,「復号文」=「平文」と説明している場合はその限りではありません.正しい方法で復号された文書が「平文」と同じになるだけで,不正な操作を施されていたり,復号鍵が間違っていた場合,「復号文」は「平文」と同じにはなりません.そのため,「復号文」と「平文」の2つの言葉を用いた上で,それらは同じものではないというスタンスで,「暗号化」に対して「復号化」を用いるのは構わないと思います.ボクは嫌ですが.
要は,混在して利用されている現状が,日本語の解釈の面から解せないという話です.これはセキュリティ専門家云々とは関係が無く,日本語リテラシの問題だと思っています.

通りすがり : 2009年6月12日 11:33

暗号化=暗号(隠蔽した符号)+化(にする)
復号=復(元に戻す)+号(符号を)
と理解しています。

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