師走に知ったこと~その2

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師走です.シラスじゃないです.師走です.そんなこんなで,年末進行中です.今日は教育研究面から.主には前所属校に向けて.現所属校と前所属校の違いを述べつつ,訓示としたい.よもや守秘義務の範囲ではあるまいな.

日本語で論文が書けるということ
先週末は全世界的にSCIS2009の〆切だったわけで,多くの人々がてんてこ舞いになっていたことかと思います.ワタクシも「理系ならTeX」を体現しつつ,研究室にTeXを広く普及させるために,論文投稿の度に啓蒙をして参りました.今のところ,CSS2008とSCIS2009に投稿した論文は全てTeXで書かれています.みんながだんだん慣れてきてくれてうれしいです.と同時に,オレが指導しているので,最初から変態スーパーテクを駆使しまくっているのが,ちょっと気になる.TeXに不可能はないって考えが浸透しすぎるとまずいよなぁ・・・.Wordなら「Wordだし」っていう言い訳が使えるのだから.

閑話休題.論文が日本語で書かれているんだ.とても嬉しいことだ.前所属校でも幾度となく論文の校閲や添削を行ったが,往々にして日本語になっていない文が見受けられた.主には主述泣き別れシンドロームなのだが,それが現所属研究室では全くと言って良いほどに無かった.これは何故だ.まさか偏差値の差ではあるまいな.

単純に自分の文章を読み返しているからではないだろうか.書きっぱなしではないということだ.前所属校の皆さんに言いたい.書いた文章は書いたら完成ではなく,読み返して確認して,校閲・添削をして,書き直して,やっと完成するものです.特に,「どうせ誰も読まない」なんて意識は捨てて下さい.少なくとも,あなた方の指導教員は読みますから.

発表が終わる毎に騒つくことはない
先日,修士の中間発表会があったんだ.ものすごい人数で,朝から晩まで発表会でした.なのに,1人12分とか,修士なのに・・・.それはそれとして,発表が終わる毎に騒つくことはない.粛々と会は進行する.なんとやりやすい.かといって,寝てるわけでもなく,この差は一体どこから来るのだろうか.

発表練習はしっかりと
手前味噌だが,プレゼンの仕方は所属研究室の学生が1番良かったと思う.手放しに褒めちぎっておく.これは偏に,発表練習を重ねた成果であると思う.費やした時間は決して裏切らない.何かをやる上で,ノーコストでハイリターンを得ようとするのは簡単ではない.ましてや,プレゼン力は練習すればするほどに上達する.かのSteve Jobsも練習に練習を重ねている

<口頭科学発表>は,単なるノウハウや「こつ」ではなく,努力して習得する専門技能なのである.生まれつき素晴らしい発表のできる人間は,まずいない.だが,ほとんどの学生は,経験と正しい指導によって,発表の技術を劇的に向上させることが可能なのである.

理系のための口頭発表術 p.21 ll.7-9

発表の中には「全く練習をしていないのではないか」と疑いたくなる出来のものもあった.それは「時間」に対する感覚で分かる.1スライド1枚という大雑把な目安はだいたい正しいわけだが,数十枚のスライドを準備していたり,時間に収めようという意識はあるらしく早口選手権のようになっていたり・・・.

そもそも,時間をチラチラ見ながらの発表は大変に見苦しい.時間に合わせようという意識の現れだと思うが,何回も何回も練習に練習を重ねれば,その練習と同じことをただ繰り返すだけで時間に収まるではないか.発表時間は予め決まっており,練習するには十二分な期間があったはずだ.にも関わらず時間感覚が身についていないのは,単なる練習不足であると言えよう.誤解を恐れることなくハッキリと述べるならば,中間発表に対する姿勢がなっていない.研究内容を見るだけが指導教員の役目では無かろうに.師走なのは察しますが,それならそれで研究グループ単位でそのような指導ができるようにしておくのが望ましいのではないだろうか.

それから人までに発表は緊張するでしょう.わかります.オレも昔はそうでした.でも,そのうち慣れます.緊張しなくなります.それは練習と経験によります.初めて1人で買い物に行ったとき,初めて1人で留守番をしたとき,大変に緊張したことでしょう.でも,今でも緊張しますか?しませんよね?それは経験によるところです.発表も同じです.いっぱい発表して,いっぱい練習すれば,そのうちに慣れます.個人差はあると思いますが.

ちなみに,プレゼンの仕方,パワーポイントの基本操作,スライドの作り方,レーザーポインタの使い方,マイクの使い方などは,やはり研究室で指導するべきだろう.でなくば,大学研究室の教育的役割はどこで機能するだろうか.これらについては後日まとめるとして,理系のための口頭発表術を推薦書としておこう.普段は使う機会がないのでわからなかったと思うので,これだけは書いておこう.ピンマイクはスクリーン側の襟に付ける.つまり,今回の場合,右襟に付けるべき.詳しくは理系のための口頭発表術のpp.56-57あたりを見ましょう.

関連:
Amazon.co.jp: 「超」文章法 (中公新書): 野口 悠紀雄: 本
Amazon.co.jp: 理系のための口頭発表術 (ブルーバックス): R.H.R. アンホルト, 鈴木 炎, I.S. リー: 本

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