大学における単位の定義

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どうも単位というものの定義を知らない人が多いようだ.これは由々しき事態である.仕方がないので,2007年に書いた記事をベースにもう1度書いてみる.学生諸君は心して読むように.

第二十一条 各授業科目の単位数は、大学において定めるものとする。

 前項の単位数を定めるに当たつては、一単位の授業科目を四十五時間の学修を必要とする内容をもつて構成することを標準とし、授業の方法に応じ、当該授業による教育効果、授業時間外に必要な学修等を考慮して、次の基準により単位数を計算するものとする。

 講義及び演習については、十五時間から三十時間までの範囲で大学が定める時間の授業をもつて一単位とする。

 実験、実習及び実技については、三十時間から四十五時間までの範囲で大学が定める時間の授業をもつて一単位とする。ただし、芸術等の分野における個人指導による実技の授業については、大学が定める時間の授業をもつて一単位とすることができる。

 一の授業科目について、講義、演習、実験、実習又は実技のうち二以上の方法の併用により行う場合については、その組み合わせに応じ、前二号に規定する基準を考慮して大学が定める時間の授業をもつて一単位とする。

 前項の規定にかかわらず、卒業論文、卒業研究、卒業制作等の授業科目については、これらの学修の成果を評価して単位を授与することが適切と認められる場合には、これらに必要な学修等を考慮して、単位数を定めることができる。

大学設置基準

1単位は45時間の学修に相当します.これが何を意味するのかを説明します.具体例を挙げましょう.半期を15週,1コマを90分として計算しましょう.1単位45時間の学修には,当然ながら授業時間が含まれています.1コマを15週で22.5時間です.ということは,残りの22.5時間は授業時間以外に学修しなくてはならないことを意味しています.これが俗に言う予習復習です.当然,宿題も含まれるでしょう.単純に,授業時間以外に,授業時間と同程度の学修をしなくてはなりません.1単位を取得するには,毎週90分の予習復習は必要であることを明確に示しています,何故ならば,これは大学設置基準であるので,この省令を遵守することは絶対であり,大学を設置する上で必要な最低の基準である.

第一条 大学(短期大学を除く。以下同じ。)は、学校教育法 (昭和二十二年法律第二十六号)その他の法令の規定によるほか、この省令の定めるところにより設置するものとする。

 この省令で定める設置基準は、大学を設置するのに必要な最低の基準とする。

 大学は、この省令で定める設置基準より低下した状態にならないようにすることはもとより、その水準の向上を図ることに努めなければならない。

大学設置基準

さて,ここからスケールしていきましょう.1単位は45時間の学修を必要とするので,実質的には半期で何単位を取得することが可能なのでしょうか?先ほどと同じく,半期は15週としましょう.ちなみに,もちろんわかっていると思いますが,半期15週の設定はかなり甘いです.実際は試験期間を含んで15週だったり,ガイダンスがあったり,休講があったりするでしょうが,そんなことがあろうとなかろうと,大学設置基準は絶対です.1単位45時間は変わりません.で.1週間は168時間です.15週で2520時間です.この2520時間を全て単位取得に割り当てたという想定にしてみましょうか.結果は56単位です.つまり,移動時間もトイレも風呂も食事もデートの時も寝ている時でさえも,ありとあらゆる時間の全てを単位取得に割当さえすれば,56単位を取得できます.まぁ,無理ですよね?

では,現実的な解を求めましょう.睡眠時間6時間/日,食事1時間/3食,風呂トイレなど1時間/日,移動時間2時間/往復,週5日登校と設定してみましょう.こうすると,1週間168時間からこれらの雑時間を差っ引くと,102時間ほど残ります.では,これを15週に拡大すると,1530時間です.つまり,34単位に落ち着きます.おっと,バイトの時間が考慮されていませんでした.どのくらい働くものでしょうか?3時間/日を週3回くらいでしょうか?こうすると31単位になります.実際には,テレビを見たり,雑談したり,デートをしたり,買い物に行ったり,なんだかんだで,さらに1割程度の時間を消費すると想定しましょう.そうすると,25単位程度に落ちます.つまり,その辺りが現実解と言うことです.

つまりはそういうことです.1年では精々50単位程度しか取ることはできないはずなんです.にも関わらず,それ以上の単位を取っている人がいるでしょう.その人達はキレた方がいいです.学費を納めているにもかかわらず,大学設置基準に見合った学修をさせて貰えていない.大学教育の怠慢であると.

200905202017追記:
結論を書き忘れた.恐らく,多く出そうな反論として「個々に能力が異なるのに,画一的に45時間なので,45時間かからない人もかかる人もいるだろう」というものが考えられる.その通りでしょう.現行教育では.しかしながら,生徒中心の学習モデルが確立された場合,本当の意味で,単位学修は本領を発揮することでしょう.っていうことが,教育×破壊的イノベーションに書かれています.ご購入はアフィリエイトから

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