さらば工学部のインタビューシリーズも第10回が最終回だったようです.完結したようなので,第8回から第10回までをまとめて.
第8回は都心私立理工系の雄である東京理科大学.
国は私学を含めた底辺部分をきちんと手当てしてほしい。「イノベーション、イノベーション」と言います。確かにシーズを出すことは大切でしょう。しかし、イノベーションを形にしていくには、技術者全体のレベルが高まらないと実現はできない。
今の国の科学技術政策は、エリート大学だけが視野に入っていることに不満があります。科学技術の平均的なレベルを上げようという意識がない。
IS105でも同じような議論がありました.「何故教育に億が必要なのか」とか「ほとんどが飛行機代だ」とか「元々できるところでやってるんだから,できて当たり前」とか,なんとかかんとか.本当にお金が必要なところにお金が落ちない仕組みになっているのは何故なんでしょう.重点配分も良いでしょうけど,日本全体における理系離れを食い止めるのに,何故重点配分なんでしょう.基礎的に全体を底上げというか充実させなくてはならないのに.
根本的には理科離れを食い止めることが大切です。結局、高校の教育に問題がありそうです。物理も化学も全然実験をしないと言います。ペーパーテストだけやるようなことになっている。何とかしないといけません。
何とかしないといけません.高校はよくわかりませんが,小中学校には市教委からの委託を受けて,オレが週2日ほど実験をしに行っていたので,大丈夫ですね!オレが初代だったけど,今年も募集があったみたいだから,脈々と続いているみたい.でも,これは市政であって,国政でもなんでもない.ただ単に,厚木市が頑張っているだけで,他の市町村がどうなっているのかはわからない.どう考えても,理工系は実験が必要だと思う.理論の座学ももちろん必要だけど,手を動かして実際に体験することの重要性を再認識されたい.ゆとり教育が目指したところは,そこだったんじゃなかったのか.
第9回は高知工大.
公立ではありませんから、県の予算や計画に縛られません。スローガンに「日本にない大学」を掲げました。1年を4期に分けて短期集中で学ぶクオーター制を採用し、全科目を選択制としました。1クラスが10人程度の専門的な少人数セミナー、企業の第一線技術者から直接指導を受けられる実学的な授業など、新しい取り組みを推し進めたのです。
クオーター制ってのは,NAISTの情報系も取り入れているはず.通期やセメスター制から見ると,わずか1/4年で完結するっていうのは,あまりにも短期間過ぎて無茶苦茶に見えるけど,全ての授業が短期集中講座だと思えば,なんてことはない.教員の負担が重そうだけど,学生から見れば,短期間で単位を獲得できるわけだから,効率が良いと思う.必要な知識をギュッと固めて,半分から4分の1の時間で取得できるのだから,良いことずくめに思える.
社会に出れば、様々な分野の専門家と渡り合わなければなりませんから、それを踏まえて教育も変えていかねばならない。従来は、細分化、深化しすぎていました。私の専門の材料工学で言えば、ある人は鉄のことしか知らない。またある人はアルミのことしか知らない。一方で、製造については分からない。そういうやたら狭い専門分野だけに秀でている人材は好ましくはありません。
先生の方も変わらなければなりません。専門を持つ先生方には負担になります。でも、私は基礎から勉強し直してくれと言っています。初めて学んだ時の新鮮な気持ちで学生に教えてほしいとお願いしている。
やっぱり重要なのは教育.研究ばっかりして,細く尖ってしまっては大学教育の現場では活躍しづらいし,改組や配置換えがあったときに,適応しづらくなってしまう.最先端の研究は大学にとって大事であるが,教育も求められる.大学って難しい.
最終回の第10回は松下電工.
心配でない面からお話ししましょう。
第1は、まだまだ日本において本来の意味で産官学のシナジー効果を発揮しようとする取り組みがなされていないことがあります。それくらい日本には余裕があると見ているのです。
もう1つ、心配でない面は、日本が世界でも有数の男女同等レベルの教育水準を維持している国であるにもかかわらず、世界でもまれに見るほど、女性が教育を生かした専門の職業に就いていないということです。やはり、ここにも余裕があるんです。
それが「余裕」なのかどうかはわかりません.「余裕」なのではなく,活躍する場が与えられていないと見るべきではないでしょうか.産学官連携というものをやったことがないのでわかりませんが,2カ年なら2カ年の計画で動いて,そこで成果を出して,はい終わり.という感じのように見えてならない.そういう意味では,本当のシナジー効果は発揮されていないことには同意です.でも,それが「余裕」とは思えず,単なる「危機感の欠如」といった感じではないでしょうか.危機感を持てば,ちゃんと機能するのじゃないでしょうか.
男女同等の教育水準が維持されているとしても,それを活用する場がないのではないでしょうか.それはそれこそ産業界が女性を積極的に採用せず,積極的に活躍する場に配置せず,積極的に評価しないからではないのだろうか.男女平等とは言っていても,決して平等には見えない.これを「余裕」というのならば,その「余裕」を生み出しているのは産業界ではないか.「余裕」とか言っていないで,何とかしてくださいよ.
日本の世界での活躍は、徹底的な知力の向上を図ってこそ実現できる。工学だけではなく、政治経済でも、世界でトップレベルの人材を輩出する必要があります。
日本というブランドが保たれているうちに、厳しく教育しなければいけません。今、教育を厳しくしておかないと、取り返しのつかないことになります。
(中略)
もっと国の予算を含めて、教育に力を入れること。詰め込み教育の復活と言われてもいい。団塊世代は嫌いがちですが、やはり必要でしょう。
やっぱり詰め込み教育なのかなぁ・・・.確かに,詰め込み教育は悪いとは思わないが.ただ,詰め込み教育で危機感は与えられるのだろうか.競争心は身につくのだろうか.ゆとり教育が失敗したから,詰め込み教育に転換すれば良いという話でもないと思うのだが・・・.今,本当にするべき教育って,なんなんだろう.
さて,さらば工学部のインタビューシリーズを第10回まで全部紹介してきました.こうやって過去を振り返ってみると,IS研で話題にあがった大学が軒並み取り上げられている.話題にあがっていて,インタビューに出てきていていないのは,北大だけか.なかなか良い視点のインタビューです.
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