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CSS2010 3E2-1を聴講して

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CSS2010の3E2-1「ネットワークセキュリティ業界における産業と学術のギャップに関する一考察」を聴講して思ったことをTwitterにつぶやいて,3E2-1後日談としてTogetterしました.しかしながら,誤字が多かったり論理が飛躍していたりで不満足なので,ここに改めて書き直します.

「学術理論における現実適用に向けた考慮の不足」において,学術側は「真っ新な世界」,産業側は「既存技術との親和性」を前提条件としている旨が説明された.学術研究においては,ある問題を解決するためのモデルを構築する際に,どうすべきかどうあるべきかを理論的に最適なものを設計する.これが「真っ新な世界」である.また,目指すものは「最高のセキュリティ」であり,現状では達成困難なものがあるならまだしも,「妥協」は許されない.対して,産業側では現状で動いているシステムに対して,新しい機能を付け加えようと考える時,そのシステムの継続可能性,運用可能性,信頼性,コストとの兼ね合いなどを考えて,総合的な親和性を重視する.そのため,既存システムとの親和性を全く考慮しない学術側の提案システムは,完全なリプレースとなるために,製品として開発・導入することが難しいという問題があり,これが産学のギャップの1つと見られている.

これは何も製品レベルでの開発に限った話ではなく,DIYプログラミングでも発生する.例えば,卒研などでプログラムを組む際に,既存モジュールや過去の資産を再利用してプログラミングするのと,真っ新から新規に書き起こすのではコストが全く違う.コストだけにとどまらず,信頼性も全く違う.既存モジュールであれば,十分にテストされており,それなりの信頼性がある.そのため,そこに手を加えない限り,その部分はデバッグの対象外にしても良いかもしれない.そのようにすれば,開発の手間を大幅に削減することができる.これは逆に考えれば,新規コードを追加した場合は十分なテストが必要であり,それが信頼性に繋がる.「ちょっと書き加えるだけだから簡単でしょ?」などという人は概ねプログラミングに理解が少ないと思われる.確かに,一見動いているかのように見えるプログラムは準備できるだろうが,それを実戦投入した際には,想定外のトラブルを引き起こすことがある.

学術的な研究であっても,情報システムとして実際に使われることを想定する場合,如何に既存システムに手を加えることなく,今までできなかったことをできるようにするのかというテクニックは1つの重要な視点である.システムの評価項目にRASISというものがある.RASISはReliability,Availability,Serviceability,Integrity,Securityのそれぞれの頭文字を取った語である.このような用語があることからわかるように,これらは研究においても実用においても評価されることが多い.つまり,実運用可能なシステムを考える場合,「Securityだけ」ではダメで,もちろん「Reliabilityだけ」でもダメで,RASISそれぞれが運用可能なレベルで維持されていることが肝要となる.そのため,RASISを考慮したシステムでなければ,実用性は無いと言える.ちなみに,個人的には最初のSはServiceabilityではなく,Sustainabilityの方がいいのではないかと思ったりしてもいる.

RASISならびに既存技術との親和性なども考慮した場合,如何に既存技術に手を加えることなく,新しい機能を付け加えるために拡張するかという話になる.ややもすれば,単なる既存技術の組み合わせになるかもしれない.それはもちろん新規性はないだろう.しかしながら,従来ではできなかったことができるようになり,その有用性が高く評価されるのであれば,十分に価値があるものであると思う.

だが,学術界の実際においては,例えば論文の査読などにおいては,「本論文で提案されている方式は~~有用性はあるものと思われるが,既存技術の組み合わせに過ぎず,新規性が認められない.よって不採録と判定する.」などと判定されることがある.もちろん学術論文においては,新規性も有用性も信頼性も重要であるが,査読基準に照らし合わせればその全てが常に必要であるとは述べられていない.これについては情報処理学会の査読基準を引用したい.

例えば、新規性と有用性の内どちらかが高く読者にとって有益と判断される場合、あるいは現時点では有用性の判定が困難で、評価を読者あるいは将来に任せた方が良いと考えられる場合には、採録とする方針でお考え下さい。

新査読基準採用のお知らせ

このように述べられており,「新規性がないからダメ」という乱暴な判定は認められていないと思われる.しかし実際には新規性は必須要件であるかのような査読結果が返されることがままあるのは如何ともし難いところである.

新規性が必須であるという立場を取り,既存技術の組み合わせによって生み出される有用性を認めないという状況を想定しよう.例えば,「あるアルゴリズムをある問題に当てはめたところ従来困難とされていたことが解決された」というような論文に対して「単なる既存技術の組み合わせ(適用)に過ぎず新規性が認められない」と言いのけられるだろうか.これは難しいと思う.この手の問題の場合,問題が解決されたことに焦点が当てられ,解決手法の新規性は強く意識されないように思われる.しかし,情報システムやセキュリティに関しては,新規性が最重要項目かのように強調され,有用性が軽視されているかのような感覚を覚えてしまうのは何故なのだろうか.

学会としても実践的な取り組みや実用可能なシステムを軽視しているわけではもちろんない.それは情報処理学会がデジタルプラクティスを創刊したことからも明らかであろう.少しずつでもこの重要性が浸透していけば,学術側と産業側のギャップも少しは埋まるのではないかと思う.

関連:
JNSA 学術界とのギャップ解消検討BoF - 4403 is written
JNSA 第2回学術界とのギャップ解消検討BoF - 4403 is written
Togetter - 「3E2-1後日談」

24日は学校に人が少なかったです.これは授業期間が終わったからでしょうか?それともオレが採点祭を開催するから空気を読んだのでしょうか?ヴァァァーーーー.でしょうか?

さて,そんな12月24日に向けて,JAXAがきずなを経由して宇宙からクリスマスメールを送るミッションを展開していた.そして,そのメールが17時ちょっと前に届きました.ヘッダを見てみると,このあたりが宇宙っぽいでしょうか?

Received: from windssupport02 ([10.22.0.6])
	by dam02.s.tksc.jaxa.jp with ESMTP id nBO9IDSM009434
	for <yocchan 4403.biz>; Thu, 24 Dec 2009 18:22:58 +0900 (JST)
	(envelope-from KIZUNA jaxa.jp)

すごいぞ!すごいぞ!!ま.自分で自分に送ったんですけどね.ヴァァァーーーー.

200912250032追記:
なお,注意事項が微笑ましい.

※メール受信時に発生するパケット料金は「きずな」の距離とは関係ありません。

「きずな」を経由して宇宙からクリスマスメールを送ろう!|くらしに役立つ人工衛星を開発する宇宙利用ミッション本部

ORF2009

| ORF2009
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11月23日~24日に六本木アカデミーヒルズ40で開催されている慶應義塾大学SFCのORF2009にちょろっと潜入してきた.ぶっちゃけ.起きるのが遅かったので,午前はリアルタイム中継の映像を見ていた.これがかなり高品質で嫉妬.シスコの製品を使っているらしい.うーん.サクサク.

写真は全然撮ってないです.写真を撮ってもモザイク処理等をすると最早何を撮ったのかわからなくなると思ったから.いや,そのくらいに人が多かったです.休日だからですかね?兎にも角にも,大入りでした.会場内は所狭しと展示やパネルがでており,最早カオス.しかも,SFCの各研究室などが出展しているわけで,バイオもあるしメディアもあるし福祉もあるしネットワークもあるし.こういういろいろな分野の発表があると,大変にエキサイティングです.

どんな展示があるのかなーって会場内をのんびりとうろうろしていたところ,うっかり#B02の出展者さんにキャッチされました.うーん.#B02をみたいオーラがにじみ出ていたんだろうか・・・.SSHのブルートフォースアタックやマルウェアの説明をしていただきました.後に,@m_mizutaniさんとお話しできました.リアル初遭遇!でも,ブログ名刺を持って行き忘れた件orz.マルウェアについてより詳しく説明をしていただきました.

その後はプレミアムセッションで「地域から社会を活性化する」ことの可能性を聴講しました.要するには,第六次産業なので,地方に行ってトリックスターになりましょうという話(だいぶ偏ってるなぁ).このセッションはパネルとしてとても面白かった.しかも,パネラの1名は遠隔テレビ会議で参加というハイテクさ加減.

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やっぱりこれからは農業だよなぁ.自給自足の生活ってすごく贅沢な生き方だと思う.ロハス的な意味で.っていう話を東南アジアの人にすると,大変に不思議がられる.満たされ過ぎなのだろうか.

さて,今日もiPhoneでTwitterしながら移動していたわけですが,どうやら#C05がかなり大変なことになっていたらしい.内容は肉食系女子が童貞を判定する研究らしい.何を言っているかわからねーと思うがオレもわからねー(AAry.他にもHTML5の中の人がいるらしかったり,学習パターンの冊子が秀逸だったりするらしい.大変に見逃しておるぞ.明日,飲み会の前に立ち寄るべきだろうか・・・.悩むぜ.

11日から行政刷新会議が事業仕分けという作業を始めたようです.事業仕分け対象は以下の通り.

我々が直接に関係ありそうで気にかけている部分は第3ワーキンググループ(以下WG3)の文部科学省です.先日の若手S募集停止に関係して,若手研究がS~B(要するに全部)が事業仕分け対象になっていました.日本の科学を新政権がどのように考えているのかを推し量る材料に十分です.この作業は13日に集中して行われました.この模様はライブ中継されたり,ustされたりして,Twitterでは#shiwake1#shiwake2#shiwake3というハッシュタグで熱く議論が繰り広げられました.これらの議論はブログ上でいくつか行われています.

ここでは同じように事業仕分けについての雑感を述べます.すでに多くの意見があがっているのですが,ちょっと普通の人とは視点が違うと思うので,あえて書きます.

まず,先端研究も若手も縮減になったことについては,事業仕分け対象に入った時点で覚悟されていたことでした.しかしながら,その結論に至る過程がおかしいです.明らかに結論ありきから議論が始まっている様子がうかがえます.先端研究は見送り3,縮減5,要求通り5であったにもかかわらず,結論は縮減であった.それでもまぁ,先端研究はまだ良かったんです.まとめ方がカオスでしたが.問題なのは若手です.

若手の議論は方向性が斜め上を突っ走っていて,面白すぎる.

参考資料より、若手を削減する理由。「支援人数を増やしてきた結果、本来民間で活躍できた博士研究員 (ポストドクター)が、そうした機会を逸することになっていないか」なんじゃそりゃ #shiwake3

Twitter / joeken: 参考資料より、若手を削減する理由。「支援人数を増やし ...

なんじゃそりゃwっていう論理展開.言ってることが微塵も理解できません.この文脈は学振の話だったと記憶しているが,学振の支援があると民間のポスドク(それもいみわからんが)の何が何の機会を逸するんだろうか?漂流するポスドクから脱して一般人に更正する機会だと言いたいのだろうか.この超論理が理解できない.

そもそも論でいくと,先端研究で若手にはお金をあげましょう的な話の流れになっていたのに,若手の作業になった途端に若手にも厳しい追及が及ぶ.Twitterの反応は素直.

高校は無償、若手研究者には金が渡らない HAHAHAHA、Fack! #shiwake3

Twitter / mongrelP: 高校は無償、若手研究者には金が渡らない HAHAH ...

まさにその通りかと思います.高校無償化して,大学以上の博士課程や若手研究者にはお金が渡らない構造になるようだ.博士になって若手研究者になっても優遇されず,支援されず,インセンティブが得られないとなれば,金がかかりすぎて困る博士課程進学者はいなくなるだろう.博士という学位は機会所得を失ってまで得るようなものではない.

あー.もう!眠くなってきた!眠くなったので,核心部分まですっ飛びます.ポスドク問題に話が展開しました.ポスドクは生活支援と同じだとか,訳のわからないこと言ってましたけど.確かに,就職支援とポスドク問題はちょっと違うかなって気はします.ででで.この発言者のポスドク問題解決策がすっ飛んでた.

若手博士は小中学校の先生に?教員免許を与える?それが就職支援??教職とってないのにどうやって先生やるの???wwwwwwwwww #shiwake3

Twitter / 4403: 若手博士は小中学校の先生に?教員免許を与える?それが ...

芝が大量に生えてますが,呆れて生やしました.もっと真面目に言及するべきだった.反省している.何故ポスドク問題の解決策が小中学校への就職なのだろうか.単純に小中学校の先生になろうとしている人はたくさんいるんだ.毎年,倍率は2倍以上あるだろう.なのに,ポスドクだからとか博士だからという理由だけで,小中学校の先生になれるとしたら,教育現場は崩壊するだろう.普通の博士は教員免許を持っていないだろう.オレは獲ったが.そういう意味では時代先取りだったかもしれない.大学教員(アカデミックな博士)は教育学程度は当然が如くに学んでいて然るべきだと,仕分け人は思い込んでいるようだ.そんなはずはないじゃないですか.大学教員は免許のいらない教育職です.それを同じ教員だからって,小中学校に送り込もうなんて,あますぎる.小中学校の教員は大学教員じゃつとまらない.教員が病むか,学級崩壊するかだろう.小学校も中学校も現場を経験してきたオレが言うんだから間違いない.オレには小学校の先生は絶対に務まらない.自信を持って言い切れる.

ちなみに,もしこれを本当にやりはじめて,博士教員養成課程を設置して推進するなら,オレはそれに参画したい.最早,オレのやりたいことは大学以上には無いような気がする.この政策では日本の科学技術は衰退するだろうし,そんなときに大学はどのような役割を担っているだろうか.

で.まとめますと,若手は1/3~1/2の縮減になりました.若手を育成することは大事だと認識している結論とは思えません.先端研究では若手にお金を振りましょうと言っておいて,若手ではちゃんとしてれば若手なんていう区分は必要ないなんて言って,両方でバッサリじゃないですか.午前の議論は見ていなかったけど,スパコンやSpring-8にも死ねと言わんばかりの超展開だったようです.

ちなみに,この後に,WG1でNICTの作業があって,それも縮減になって,その後にWG3では科学未来館の毛利衛館長がすばらしい話術で攻勢に転じたのだが,結果は縮減よりも酷い廃止だった.オレの中では毛利さんの押し切り勝ちだと思っていただけに,ショックだった.しかも,この仕分け人の発言が意味不明で,この議論の不毛さを象徴した.

なんだそれ→「今日の仕分けを経て入場者が増えることを期待します」意味わかんね. #shiwake3 (PTF Sub live › http://ustre.am/7zyD)

Twitter / 南極サボテン: なんだそれ→「今日の仕分けを経て入場者が増えることを ...

もういや.この仕分け人.意味がわからない.要求を却下して廃止なのに,それをどう経ると入場者が増えるんだ.毛利館長の不断の努力もここで朽ちるのだろうか・・・.

最後に,WG3ではすばらしい名言がいくつも残されたようなので,それをここに記録して終わりたい.

すごいな。。。「日本の研究がトップレベルならば給料をあげなくても外国の方はいらっしゃるのではないか」 #shiwake3

Twitter / あきみち: すごいな。。。「日本の研究がトップレベルならば給料を ...

蓮舫「納税者がトップレベル研究者にお金を払った分、納税者個人にもリターンを貰えないと納得できません!(キリッ)」 #shiwake3

Twitter / satromi: 蓮舫「納税者がトップレベル研究者にお金を払った分、納 ...

#shiwake3 での蓮舫議員爆弾発言聞き直した「税金をお支払いして後押しした国民は何を実感できるんですか?(略)具体的に私たちは何を身につくんですか?何が残るん ですか?(略)じゃあ、これを支えた納税者は何を実感するために、税金をこの方達にお支えするのか具体的に教えて下さい。」

Twitter / satromi: #shiwake3 での蓮舫議員爆弾発言聞き直した「 ...

WG3は完全にダメだと思った.

まとめ:
博士に進む心づもりの学生・院生は海外に行くことを真面目に検討した方がいいと思う.そして,若手研究者も研究者の道を歩む覚悟ならば,海外で活躍された方がいいと思う.オレは英語が苦手だし,研究が得意なわけでもないので,その道はあきらめる方向になるのだろう.

本当に優秀な博士は海外に流出していくのだろう.そうして残った中途半端なオレのような博士が日本を支えることになってしまうのだろうか.でも,オレはヘタレだから,支えられないと思います.だから,逃げるんでしょう.

なんだか全然まとまってないダメなまとめだ.何を言いたかったかって,WG3の仕分け人が論理的じゃなくてサッパリ理解できなかったことと,理系の将来がお先真っ暗になりそうだなってことと,ポスドク問題の解決を小中学校教員に委ねるのは間違っているってことと,秋田の博士教員が成功したのは秋田だからだと思う点です.それでも,ポスドク問題対策で博士教員育成課程を設置するなら,オレは参加します.ほとんどのポスドクは参加しないのではないかと思いますが.

そうそう.16日9:30からWG3では教員免許関連が作業されるそうなので,現地に赴いてみるつもりです.iPhone一本で行きますので,tsudaるわけではなりません.デジカメで写真は撮ってくるかもですけど.現場の雰囲気を見てきたいです.オフィシャルの定点カメラじゃ臨場感が伝わらないし,ustも接続数が多くてか映像が乱れ気味だったし.社会見学してきます.

関連:
痛いニュース(ノ∀`):ノーベル賞の野依氏、蓮舫氏らの「スパコン、世界一になる必要あるのか」発言に憤慨
事業仕分けWS3 まとめウィキ
ニコニコ動画:事業仕分け第3WG 11/13 - 発声練習
Geekなぺーじ : 競争的資金(外国人研究者招へい) 文部科学省 [テープ起こし]
事業仕分けの論点 - タケルンバ卿日記
事業仕分けの論点 Part2 - タケルンバ卿日記
事業仕分けと科学技術立国という幻想 - 徒然なる記録 - Chaotic Shore
文科省 「あー終わった。完全に終わったわ。仕分け人がアレじゃあ日本の科学はもう完全に終わった」:アルファルファモザイク - 2ちゃんねるスレッドまとめブログ
大隅典子の仙台通信 : 科学技術立国と呼ばれた日本の行方
研究がもたらすリターンとは - さまざまなめりっと - はてなグループ::ついったー部
研究者の血が流れた「13日の金曜日」の『事業仕分け=「サイレント文化大革命」』について書いてみる。 - 404 I’ve not found
404 Blog Not Found:#shiwake3 見てorzとなったみなさんへ
政府に頼るのをそろそろやめないか。|堀江貴文オフィシャルブログ「六本木で働いていた元社長のアメブロ」by Ameba
"日本の科学研究、ボロボロに" iPS細胞生んだ事業、スパコン、科学未来館など、仕分け人が軒並み「予算削減」「廃止」:ハムスター速報
科研費仕分けと削減のことなど - rhetoricolor

9時55分になりました.東京地方の皆さんは業務を中断し,皆既日食を観測して下さい.

P1020912.JPG

すごいです!食の始めにもかかわらず,もう太陽が隠れています!!!!!orz

200907221026追記:
気象庁のひまわり画像が503です曇ってるし,思うつぼですねっ!!

200907221220追記:
ハイクの情報によれば,NHKが本気を出したらしい.テレビないけど・・・.

200907221236追記:

P1020914.JPG

食の終わりにもかかわらず,太陽が帰ってきません.サーン!カムバーーック!!orz

200907221433追記:
NHKの本気をYoutubeで発見.

関連:
2009年7月22日皆既日食の情報:国立天文台
気象庁 | H21/7/22日食時の「ひまわり」画像
気象庁 | 日食時の「ひまわり」画像(解説と過去の事例)
NHK 生中継 46年ぶりの皆既日食 7月22日[水曜]
皆既日食観測プロジェクト | 東海大学
東海大学Channel - 東海大学 | TOP | オフィシャルチャンネル

相次ぐ産地偽装を見破ろうと、肉や魚介類、穀物などの農水産物の産地を判別できる新手法を、首都大学東京のグループが開発した。農産物に含まれる酸素や窒素の微妙な違いを利用し、国内外、都道府県、さらに細かい地域まで判別できる

asahi.com(朝日新聞社):産地偽装見破る新手法 米や牛肉、元素レベルの違い判別 - サイエンス

考えることは一緒か.科研費に出そうとしたけど,1人1つまでだったから,出さなかった.出そうと思ってたのはDNAからのアプローチだったんだけど,

同じ品種でDNA解析では判別できなかった産地が見分けられるようになった。

asahi.com(朝日新聞社):産地偽装見破る新手法 米や牛肉、元素レベルの違い判別 - サイエンス

ってことなんで,出してもダメでしたね.こうして世界はどんどん良くなっていくんですね.わかります.

理科の授業で使う実験器具や教材の費用として、文部科学省は、200億円の予算を政府の新経済対策に盛り込む。昨年度までの数年は年13億円前後で推移。 厳しい財政事情で購入費がゼロの学校もあるため、例年の15倍の「特盛り」予算で、「理科離れ」「理科嫌い」を防ぐことにした。

asahi.com(朝日新聞社):理科教材費、どーんと15倍 経済対策に200億円盛る - サイエンス

なんとなく,論点が狂ってる気がします.確かに,実験器具が足りてないので,それを購入するための予算を組んだことは良いと思います.実際に,実験教材を教員が自費で買ってたりするので,目も当てられない.御上は理科離れ対策を叫びました,現場は悲鳴をあげました.笑い話ですね.

なにを言いたいかというと,人がいないんです.実験機材は買えても,人を雇うための予算ではないようです.物があっても,それを使える人がいなければ意味がありません.中高は別にしても,少なくとも小学校には理科専任もしくは実験特任を送り込まなくてはいけません.そうしなければ,物があっても小学校理科で実験が行われる頻度は一向に増えないでしょう.

それは何故か.分からない人は想像力を働かせて下さい.小学校の先生は基本的にクラスに密着なので,全教科を担当します.国語も算数も社会も体育もそして理科も.最近は,TTが導入されたり,教科専任が増え始めていますが,まだまだ足りません.話を戻すと,理科実験が増えない理由は至って簡単で,時間がないからです.いいですか.国理算社体という時間割だとしましょうか.理科実験の準備はいつしますか?いつ片付けますか?始業前に準備しますか?1時間目はその理科室が使えなくなってしまいますね.では1時間目と2時間目の間に準備しますか?わずか5分で?無理でしょ.じゃぁ2時間目の始業後にやりますか?授業時間がどんどん減っていきますね.このように,理科実験はその性質上,小学校の教員が簡単にできるようなものではないのです.だから,理科専任が必要でしょう.実験特任でも構わないでしょう.少なくとも,実験をサポートする役割をする人員を配置しないと,理科実験を気軽にできません.

そういうことを3年前に現場で体感してきました.小中に理科補助教員として派遣されていたわけですが,中学校は理科教員がいるのでそれ程ではありませんでしたが,小学校における理科補助教員の役割は重要だったと思います.理科離れ対策はまず人員から.是非.

200904131544追記:
理科支援員等配置事業ってのがあるらしい.JSTがやっているらしい.オレがいう理科補助教員とほぼ同じことだと思う.違いは,JSTのは2008年度からで,オレが理科補助教員をやっていたのは2006年度のこと.しかも,雇い主はJSTではなく,市教委.先駆的な試みだったと思います.オレが着任したのは初年度で,認知度が全くなかった所為で,「募集したけど人が来ないよ!」ってわけで,急遽招聘されたわけだし.なんとなく,知名度が低そうなので,宣伝宣伝.

関連:
文科省、経済対策で理科教材費に200億円 - スラッシュドット・ジャパン

1年後の成果報告を期待したい.

秋田の博士教員採用決定 - 4403 is written

まだ1年は経っていないが,成果報告のような結果が見えてきているようだ.情報は発声練習さんから.

採用された6人(うち1人は非常勤講師)の1人、瀬々将吏・秋田県立横手清陵学院高等学校教諭が、NPO法人サイエンス・コミュニケーションのメールマガジン「SciCom News」26日付の巻頭言で、近況を報告している。

2009年1月26日「秋田県のポスドク先生は今」 サイエンスポータルレビュー 科学技術 全て伝えます SciencePortal

秋田の博士教員6人の1人である瀬々博士が近況報告を行っているらしい.これは必見だ.

大学で多くの時間を過ごしてきた私にとって高校での生活はとても新鮮でした。一つの職員室に80名もの大所帯で、国語や社会、音楽など、異分野の先生方とも距離が近くいろんな話ができます。(中略)専門分野だけではなく、いろいろなことに興味のある方ならきっと楽しめる環境だと思います。

[SciCom News] No.278 2009年1月26日号 Vol.1 [まぐまぐ!]

小中学校で理科補助教員をやっていた経験からいえば,この意見はよく分かる.大学だと研究室というユニット単位での活動になって,横の研究室または他の学科との繋がりというのはそれ程に強くはない.そこにきて,小中学校は学年毎の固まりはあるものの,全体としてみれば横の繋がりも縦の繋がりも色々あって,人脈が縦横無尽の状態といえる.そういう環境の中で,それぞれがそれぞれの役割でみんなと助け合っているというのが,いわゆる職員室だろうか.研究者の世界こそ,こうであるべきではないのだろうか.色んな分野の人とガチャガチャやって,それぞれの強みでコラボレーションするなんて,素敵すぎるじゃないか.工学のオレに数学科の力を分けてくれ!人文社会学的なアプローチ法を教えてくれ!そんな感じ.職員室は楽しい.これ,間違いない.

いまの中等教育の課題は、生徒の「学びへのモチベーション」をいかに喚起するか、ということに尽きると思っています。高校にアカデミックな態度と雰囲気を持ち込んで生徒をその気にさせる存在として、ポスドク出身の方々がこれからもおおいに活躍できることを期待しています。

[SciCom News] No.278 2009年1月26日号 Vol.1 [まぐまぐ!]

これもまた真実で,中等教育に限った話ではないと思う.理系離れが叫ばれる昨今においては,確かに中等教育で理科離れを食い止め,理科好きを育成することに重要な意味があるだろう.しかしながら,それを真に行うべきは,高等教育だろう.高等教育は「学びへのモチベーション」に寄与できているだろうか.難しい数式を計算できることも,広く深い知識を獲得することも,高等教育の目的ではあるが,「勉強おもしれぇ!」という意識を芽生えさせ,正に生涯学習を推し進める力を授けることが高等教育の役割ではないのだろうか.というか,オレはそうだと思っている.「勉強つまんね.単位取れればいいや.卒業できればいいや.学歴と建前と猫かぶりでいいとこ就職するぜオラー.」っていう学生を育てるのが大学の仕事ですか?違いますよね?大学における教育ってなんですか?何を求めているんですか?

Q4:教育なめられすぎだと思う

(中略)

教育業というのは中途半端な能力の持ち主にぴったりの職種なんですね。

能力を持っている者がそれを使わないのは罪だとなぜ思えないのですか? @heis.blog101.fc2.com

話はこの辺りに帰着するわけだが,「博士=研究者」はエリートだと思うんだ.博士だからって,「研究者」として大成しないことだってあるだろう.「研究者」としては不十分でも,その博士としての卓越した知識などは,十分に役に立つはずである.誰のために役立つか?次世代のために役立てるべきだ.自分が「研究者」としてダメだとしても,「次世代の研究者」になるかもしれない若者に何かしらの刺激を与えることができるかもしれない.それは可能性の問題であって,博士は研究をするだろうし,教育もして然りだと思う.それが博士という存在の役割だと思う.

どのように教えれば良いかということ自体も研究のテーマと成りえる。(同じく、「研究をやる時間がなくなったときに先生を続けるモチベーションはなくならないか?」という質問に対しての答え)

参加記(2):プレゼンテーションの感想 - 発声練習

思うには「研究をやる時間がなくなったときに先生を続けるモチベーションはなくならないか?」という感覚なら,教員になんてならない方がいいと思う.教員になったら研究をやる時間が無くなるくらいに教育に没頭しなくてはならない.そのぐらいの勢いが欲しい.そういう情熱が教育現場に浸透すれば,学生の勉強に対する意識も変わると思うのだが・・・.「教育自体が研究テーマ」 というのも,その通り.ただ,「これだ!」という画一的な教育法は恐らく見つからない.この前の班はこの方法で上手くいったのに,今回の班は上手くいかない.去年と同じ方法で授業を進めているのに,今年は成績が振るわない.そんなことはザラです.常々考えて,どうしたら上手くいくかを試行する.こういうことって,博士は得意としそうなことです.

また、博士号取得者は都道府県教委が認めた場合、教員免許を与えることができる「特別免許状」という制度がありますので、全国に広まると大変いいのではないかと思います。

「博士ネットワーク・ミーティング@つくば」博士先生登壇 - 橋本昌隆 株式会社フューチャーラボラトリ - Yahoo!ブログ

この話は詳しく書こうと思えば,詳しく書けまくるのだが,眠いので控えたい.機会があれば「特別免許状」という制度と現状の運用について述べたい.述べたいが書いたところで読者はいるのだろうか・・・.一応,情報のありかだけ箇条書き.

まとめ:
博士と教育.面白くなってきました.もっと注目されて,取り上げられまくればいいのに!ポスドク問題のようなネガティブキャンペーンはもういいから,博士に関するポジティブアピールをお願いします. 

関連:
「博士教員」理科好きを育成 : ニュース : 教育 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
教員免許のない社会人の採用は広がるか?【Benesse(ベネッセ)教育情報サイト】
秋田が博士を教員として採用の動き - 4403 is written
秋田の「博士」教諭募集に全国から57人 - 4403 is written
秋田の博士教員採用決定 - 4403 is written
最近のドクター関連まとめ - 4403 is written

オープンアクセスは今後も学会、研究者、図書館等、学術情報流通に携わる人々にとっては大きな課題となることは確かなことでしょう。(中略)オープンアクセスそのものの意味も、それを語る人の立場によって異なることも指摘されています。また、我々は、日本におけるオープンアクセスとは何か?をそろそろ検討すべき時期でもあるように考えます。

SPARC Japanでは初のOpen Access Dayである10月14日に、セミナーを開催し、多くの方々とオープンアクセスに関する検討を行いたいと思います。

国際学術情報流通基盤整備事業 │ イベント情報 │ SPARC Japanセミナー【Open Access Day特別セミナー】「日本における最適なオ-プンアクセスとは何か?」

ぎゃー!サンじゃないSPARCがNIIで面白そうなことをやっていた件.参加費無料だし,近いんだから,ちょっと時間を作れば行けましたよ.いや,やってること自体を知らなかったから,どれだけ暇だったとしても行けなかったけど.

一応,GoogleカレンダーのIT勉強会は見てるんだけど,情報量が多すぎるから,普段は非表示にしてるんだよねぇ・・・.しかも,このイベントもしっかり載ってたし.情報の海から本当に必要な情報を見つけ出すって,やっぱり難しい!こういう時はプッシュサービスが嬉しいよなぁ・・・.プッシュされすぎるとうざいけど.難しい!

関連:
SPARC Japan セミナー2008 「日本における最適なオープンアクセスとは何か?」参加記 - 発声練習
情報系学会の研究会はもはや勉強会に負けている可能性が高い - jj1bdx: life beyond Japan
情報系学会の研究会で「情報系学会の研究会が危ない」理由を話してきた - jj1bdx: life beyond Japan
研究者はもっとオープンになるべきではないか - 4403 is written
情報系学会の研究会で「情報系学会の研究会が危ない」理由を聞いてきた - 4403 is written

そういう問題よりも、今の大人たちが理系に対して持っている偏見の方が、子供たちに与える影響は大きいだろう。算数や理科ができたって社会では役に立たな い。そんな小難しいことを考えてどうするのだ? 政治家も社長も、偉い人はみんな文系じゃないか。社会を支配しているのは文系の人間なのだ。理系はみんなオタクで、わけのわからない人間ばかりだ。理系は人間味がない。理系は人情がわからない。そういった目で見ているから、それが子供に伝わる。

MORI LOG ACADEMY: 理科離れについて

親は子の鑑.親が子に与える影響というのは大きい.親が理系を軽視するから,子供も軽視する.

持論の繰返しになるが,理系離れは理系の力不足にあると思う.理系は理系の素晴らしさを余すところなく須く世に知らしめなくてはならないと思う.政治家っていう文系の偉い人達が日本の行く末を良くも悪くも示すように,研究者っていう理系の偉いっぽそうな人達は理系の使命を果たさなくてはならない.

「理系は縁の下の力持ちです」

なんて控えめなことを言ってる時代は終わらなくてはならない.その縁の下でどのような活躍をしているかを今の若者もみんなみんな知らずにいるから,これだけ理系が軽視されているのだろう.理系がいなくなった世界を創造させてしまえばいいのに.電気もなければ,水道もない.パソコンもテレビもラジオも車もなくなる.世界を動かしているのは文系なのかもしれないが,文系だけでは世界は回らないのだ.同じように,理系だって,理系だけではダメで,文系が必要なんだ.バランス感覚はとても重要だと思う.今はそのバランスが大きく崩れている.どうにかしなくては.

ちょっと話は変わるが,小中学生は本当に理科が嫌いなのだろうか.算数・数学はよく分からないが,少なくとも実験をしている小中学生は楽しそうにやっていた印象がある.実験って楽しいよね?楽しくないのかな?ペットボトルと水と空気入れでロケットが作れたり,コーラにメントスを入れてみたり,スチールウールを燃やしたり,マグネシウムに火を付けたり,味噌汁で電池を作ったり,ソーラーカーを走らせたり.理系離れを食い止めるには,まずは実験ではないだろうか.というか,むしろ,座学を辞めちゃってもいいんじゃないだろうか.小中学校は実験を主体に,座学をミックスという感じで如何だろうか.イノベーションは楽しさから.

関連:
研究者はもっとオープンになるべきではないか - 4403 is written

200810152240追記:
ちょっと書き忘れ.1つの策としては,メディアを利用する手がある.バラエティが「理系カッコイイ!」とか,アンアンとかジュノンあたりで「これからは理系がナウい」とか,女性セブンあたりが「独占取材!理系の最前線~時代はここまでやってきた」みたいな記事を打ちまくればいいと思う.良くも悪くも,メディアの影響って大きいと思うのですよ.理系離れを防止するムーブメントが起こせるのならば,それが例え扇動だとしても.

ムペンバ効果について,実験を何度か行ったのだが,上手く行っていない.そんなこんなの状況下で,ムペンバ効果は日本雪氷学会で議論されることになっていた.というわけで,その議論が行われた雪氷研究大会はどうなったのか.

<ムペンバ効果のサイエンスについて>

「ムペンバ効果のサイエンス」と題してムペンバ効果の検討会を開催します。

湯が水より早く凍ることがあるという現象は、西洋では2000年以上も前から知られていますが、1960年代に再発見されムペンバ効果と呼ばれています。

ムペンバ効果は今年7月のテレビ番組で紹介されて以来、雪氷関係者以外にも関心を持たれています。

今回の会合では、この現象に関してのこれまでの研究の経緯を整理し、今後この現象の解明のためにどんなプロジェクトを組織すべきか、等々について話し合います。

雪氷研究大会(2008・東京) - 分科会・各種会合のご案内

行けば良かったかなぁ・・・.行ったら行ったで,ムペンバ効果以外の発表も存分に楽しめたような気がするが・・・.というわけで,行かなかったので,行った人のレポートをありがたく拝見するわけです.参加された山形大学の方と思われる人のブログを引用させて頂きます.

 本郷キャンパスで行われた雪氷研究大会で開催された「ムペンバ効果のサイエンス」を見に行ってきた。
結論からいうと、
・発表があった実験は、容器に入れた水の温度を下げる場合(お湯を低温環境下にばらまいたときの話ではない)。
・現在のところ、「湯が水より早く凍る」現象を(過冷却以外で)観測するための実験のパラメータは不明。
ということである。

ムペンバ効果調査中(5):雪氷学会のシンポジウム :: Archives

なるほどなるほど.要するに,素人如きがホイホイと再現できるような代物ではないのですね.実験パラメータが不明ということは,運良く観測できたとしても,再現ができないかもしれないし,1度成功した環境であれば,よくわからないけど何度でも成功するかもしれないと.

・ムペンバ効果自体は紀元前から報告がある。
・理由の説明は、あったとしてもよくわからないもの。
・ムペンバ君の再発見以後の論文やら解説記事のうち、自分で測定したデータを出している論文は7つしかない。この中にも、実験として不十分・不完全なものが混じっている。
・ムペンバ効果という名前を使うのは間違いのもとで、湯と水で起きる現象の比較なのだから「湯と水くらべ」とでも呼んではどうか。
・確率的現象である、過冷却が実現した後に起きる凍結は今後の調査の対象外にするべき。
・凍る速さの基準は、凍結開始と凍結終了の2種類あることに留意すること。
・説明は膨大な数あって、わかったつもりにさせる図が出ていたりするが、間違いと混乱のもとである。
・今後は系統的かつ計画的にやらないとだめだろう→プロジェクトを組んでみんなでやりませんか。

ムペンバ効果調査中(5):雪氷学会のシンポジウム :: Archives

発生するにはするが,科学的に解明されていないという状況が正しそうだ.「ムペンバ効果」という名称が付いていることが間違いの元らしい.「ゲリラ豪雨」や「オレオレ詐欺」や「オグシオ」みたいなもので,固有な名称が与えられることによって,小難しい何かをわかった気になって,言葉が独り歩きし始めるんですね.わかります.Web2.0もWeb2.0という固有の名称があることに意味があるって,どっかの偉い人がいってました.プロジェクトを組んで,みんなでやるってのは,楽しそうな試み.水と冷蔵庫とちょっとした手間を差し出すだけで良いのなら,参加したいところです.

普通に実験したのではどうやら再現しないことが多そうなので、氷を早くつくるハウツーとしては現状では使えない。ためしてガッテンの内容では情報が不足……というかそもそも系統的な調査がこれからなので、ガッテンを見た人が全国で自宅の冷凍庫で試したとして、うまくいくのは、偶然うまくいくパラメータ を当ててしまった場合に限られる。

ムペンバ効果調査中(5):雪氷学会のシンポジウム :: Archives

ですよね~.何と言っても,オレは1度も再現できていない.早く氷を作りたいのに!!ところで,ムペンバ効果に噛みついた大槻教授は,もう飽きてしまったのだろうか.うーん.不思議に思ったら,最後まで追求したいよなぁ・・・.やるならとことん最後まで.

関連:
大槻義彦のページ ―大槻義彦公式ブログ― powered by ココログ: 7月 第2回 【ムペンバ効果】
大槻義彦のページ ―大槻義彦公式ブログ― powered by ココログ: 7月 第5回 【ムペンバ効果、再び】
大槻義彦のページ ―大槻義彦公式ブログ― powered by ココログ: 8月 第4回 【『ためしてガッテン』ありがとう】
ムペンバ効果って実はツンデレじゃね? - 4403 is written
ムペンバ効果の追試 - 4403 is written
ムペンバ効果その後 - 4403 is written
ムペンバ効果は日本雪氷学会で本格議論へ - 4403 is written

とっくに書いたと思っていたら,非公開になっていた.しかも書いてなかった.ちょうど良く,今日は休日だし,引用したい記事を見つけたので,書いてみる.

 小学生のときから、理科の授業では実験がつきものである。こういった経験を積んで大学生になった学生たちに対して実験の授業をすると、次の2点において、彼らが誤解していることに気づく。

 まず、測定が終了したときに、彼らは「終わった」と思うようだ。これは間違いである。測定が終わっただけ。データが採取されただけである。実験とは、そのデータを考察する行為まで含まれている。したがって、そのあとの作業(たとえばレポート作成)の方がむしろ実験の本質である。

 もう1点は、やはり測定が終わったときに、彼らが口にする「先生、これで成功ですか?」という質問である。これは、彼らがイメージしている実験が、「こうなるべき答があるものを実際に自分でやってみること」だからだ。

MORI LOG ACADEMY: 実験に関する2つの誤解

書きたかったことがそのまま書かれているようだ.オレが特に書きたかったのは,2点目の話で,学生らは実験が必ず成功すると思っていることについてだ.オレの担当実験は,普通の見込で動いている限り,失敗する類のものではないのだが,前期中も何人か実験失敗したものがいた.厳密にいえば,実験失敗ではなく,実験未了である.通常3時間程度でできる実験を5.5時間以上かけてもできないというのはどうかと思うわけで,時間内に規定の処理を完成させることも大事なスキルの1つだと思っているので,なるべく時間延長はしないように心がけている.

そういう状況で実験終了の旨を伝えると,決まってこう返ってくる.「実験終わらなかったんですけど,単位大丈夫ですか?」と.オレが思うには,十分に試行錯誤を繰り返し,様々なデータを取っているので,成功はしなかっただけで,実験が終わっていないとは思えない.実験は必ず成功するものではなく,失敗という結果も有り得る.そして,その時に大事なのが,レポートである.森さんの言う1点目である.

実のところ,実験が成功したか失敗したかというのは成績評価の観点からはどうでも良くて,実験成功による達成感や実体験を与えたいというのが実験における教育的配慮の側面である.実際,実験に成功したか失敗したかという評価項目を少なくともオレは持っていないし,そんな評価は意味がないと思っている.本当に重要なのは,実験によって得られたデータをどのように集計し,まとめて,分析し,評価するのか.そちらに興味があるし,そこで成績評価をする.だから,実験が失敗だって全く構わないわけで,何故失敗したのか?原因は何か?何が良くなかったか?理論上はどうなるべきだったか?そのためにはどうしなくてはならなかったか?どうすれば成功することができたか?などを論理的に分析し,述べてくれれば,それは十分に高評価なレポートとなるだろう.

教育として行われる実験における成功や失敗というのは,成績には全く影響しなくて,学生に経験を与えられるか否か程度の差しかない.程度の差と書いたけど,その体験の差は実験の種類によってはかなり大きいかも知れない.オレの担当実験ではそれ程ではないと思う.達成感は得られると思うが.

実験は失敗してもいいんだよ.失敗したのなら,失敗した理由をしっかりと考察すればよい.失敗から学ぶことの方が多いはず.

最後の授業 ぼくの命があるうちに DVD付き版

最後の授業 ぼくの命があるうちに DVD付き版
著者: ランディ・パウシュ,ジェフリー・ザスロー
訳者: 矢羽野薫
価格: ¥2310(税込)
出版社: ランダムハウス講談社 (2008/6/19)
ISBN-10: 4270003502
ISBN-13: 978-4270003503

まさかの2日連続レビュー.夏休みの読書感想文コンクールに挑んでいるわけではありませんので,あしからず.小学校の宿題として,このブログをコピペして提出して頂いても構いませんが,書評と読書感想文は違いますから.残念.

閑話休題.2008年7月25日に亡くなられたカーネギーメロン大学のランディ・パウシュ教授.この本は2007年9月18日にCMUで行われたランディ・パウシュ教授の最後の授業を記録したものである.この本は2種類が発売されており,書籍のみDVD付きがある.DVDには70分を超える最後の授業が収められている.この映像はなんとYouTubeにて見ることができるYouTubeの映像はオフィシャルのもので,全編を見ることができる.だが私は800円の差を以てしても,DVD付きをオススメする.手元に保存したい映像だからだ.

私はこの最後の授業がYouTube等で見られることは知っていたが,なんと言っても英語だったことがあり,見たくても見れない状況だった.それが幸か不幸か,訃報に際して,訳本のDVD付きがバカ売れしている旨を知り,訳本ならびに字幕付き動画があることを知ったのだ.それはそれは,即座に注文をしました.やっとまとまった時間が得られたので,今日ついに,私にとって最初で最後となる彼の授業を受講しました.

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ものすごい影響力だ.あっという間にコンテンツアクセストップに躍り出ましたよ.全然はてブが付かないけど・・・.

NHK広報部では、「複数の条件で実験を繰り返した上で、高温水の方が早く氷ができ上がることを確認し、番組を制作しました」とだけ説明する。とすると、「複数の条件」以外では、ムペンバ効果が現れないということなのか。

「ためしてガッテン」の実験を監修した北大低温科学研究所の前野紀一名誉教授は、こう解説する。

「普通は、お湯が先に凍るということはありません。番組では、そういうことがあると言っているのです。それは、お湯と水などの温度の組み合わせ、容器の形や大きさ、冷凍室の温度、空気の対流といった条件によってです」

「水よりお湯早く凍る」論争沸騰 日本雪氷学会で本格議論へ(J-CASTニュース) - Yahoo!ニュース

なんだ.単なる特殊ケースか.実用的じゃないのね.やっぱり,氷が急に必要になったら,ムペンバ効果を利用するよりも,コンビニに走る方が確実なわけだ.

そして、東大で9月24~27日に開かれる日本雪氷学会の研究大会で、関心ある研究者を集めて科学的に議論したい考えを明らかにした。

「水よりお湯早く凍る」論争沸騰 日本雪氷学会で本格議論へ(J-CASTニュース) - Yahoo!ニュース

最早,ボクの及び至る範囲を超えたので,日本雪氷学会の議論結果を待ちたいと思います.てか,聴講に行けばいいのかな.面白そうだ.

関連:
ムペンバ効果って実はツンデレじゃね? - 4403 is written
ムペンバ効果の追試 - 4403 is written
ムペンバ効果その後 - 4403 is written
スラッシュドット・ジャパン | ムペンバ効果って何?

Okumura's Blogで取り上げられていたので,再認識した.色々と「波紋」を巻き起こしているようです.面倒くさいことですね.

私自身は実験大好きっ子なので,番組は見ていませんが,色々な情報を駆使して,「お湯が早く凍る」っていうことを検証しています.失敗続きで,1度も成功していませんが.誰かオレを成功させてあげてください.

現象を確認できていないので,なんともかんともですが,ムペンバ効果と呼ばれる現象は観測可能のようですが,オレが期待するような「氷が早く作れる裏技」的な存在でないこともまた然りのようです.ガッカリだ.

国営放送なら国営放送なりに精査して,議論の余地がないくらいに正確に伝えて欲しいものです.国民の大半が見ていて,よっぽど影響力があるのに.

湯冷ましを使うという意味では?
あと,給湯器のお湯(沸騰していないもの)と,
沸騰させたものでは恐らく違う反応をすると思われます.

っていうコメントを頂いたので,昨日に引き続いて,超高速に追試.

実験:
実験日:2008年7月29日11時40分頃
気象条件:温暑い,曇ってる
実験環境:研究室(化学でも物理でもないよ><)
実験道具:食堂にありそうな茶碗2個,SJ-14Pおいしいらしい東京の水道水,給湯器から出てくるお湯(中身は水道水),沸騰させるためにPDG-D400

まず沸騰した水じゃないとダメじゃないのか疑惑を検証.

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11:40開始.

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12:31終了.

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勝者,水道水orz.その後,何度かリトライするも,水の圧倒的な強さに,ムペンバが勝てません.わかりません.わかります.

仕方がないので,東京のおいしい水道水を使っているので,東京都水道局のやり方を採用してみた.PDG-D400の力を利用して,沸騰したお湯を60℃保温で利用.水道水は温度計がないので何度かわかりません.常温です.

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割り箸も設置するする.従来通り,左がムペンバで,右が水道水です.15:21開始.

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2時間後の17:25に終了.

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結果.凍り始めは水道水が早い.2時間経過後の氷具合はどっちもどっち.

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2時間ぐらいで取り出すと,周りは凍ってるんだけど,中身は液体っていう,素敵な状態になります.面白い♪

最早,「お湯の方が早く凍る」っていう定義もよくわからなくなってきました.「お湯」ってなんですか?「沸騰した水」ですか?「暖かい水」ですか?「湯冷まし」ですか?「凍る」ってなんですか?「凍り始め」ですか?「完全氷結」ですか?

結論:
ムペンバ効果が再現できません.ムペンバ効果が実際に観測可能ならば,何回やっても観測できないこの状況が相当の特殊ケースといえるのではないでしょうか.困った.「こうやれば絶対にムペンバだ!」という方法をご存じの方は,恥ずかしがらずに教えてください.

もちろん,ホッテントリメーカー.推定196ブクマでお願いします.

世の中にはムペンバ効果というものがあるそうです.つい最近っていうか,一昨日知りました.なんか,こんなエントリを書けば,ホッテントリかなと思って,論文に行き詰まって現実逃避で書いている.

話題沸騰中なのには訳がある.ためしてガッテンでムペンバ効果が紹介されて,それに大槻早稲田大学名誉教授が噛み付いて,どうのこうの.

NHK『ためしてガッテン』という『科学』番組が、
「冷蔵庫で早く氷を作りたいなら、いったんお湯に沸かして凍らせると良い。」
というものを放送したというのでした。
これを『ムペンバ効果』といい、いまだ物理学で未解明というものです。

大槻義彦のページ ―大槻義彦公式ブログ― powered by ココログ: 7月 第2回 【ムペンバ効果】

だそうです.物理学なんて,単位を揃えて計算するだけで良い点が取れるので,テスト的には好きでしたが,学問としては得意ではありませんでした.いや,現象を見るのは好きだけど,数式を見ると視力が極端に悪くなります.閑話休題.未解明だから,再現しないかといえば,そういうわけでもないはずなので,ムペンバ効果を確認してみました!実験大好き!

実験:
実験日:2008年7月28日11時20分頃
気象条件:暑い,曇ってる,夕立降りそう
実験環境:研究室(化学でも物理でもないよ><)
実験道具:食堂にありそうな茶碗2個,SJ-14Pおいしいらしい東京の水道水,給湯器から出てくるお湯(中身は水道水).

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11:41:26実験開始!SJ-14Pの冷凍室に給湯器から出てきた熱湯(パネル表示99℃,写真左手)と東京の水道水(常温,写真右手)を食堂にありそうな茶碗に入れました.なお,庫内温度と水温を測る装置はありません.あしからず.

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11:59:54.状態変化無し.水温はムペンバが温く,水道水はすんごい冷たいです.

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12:17:08.ムペンバが冷たくなってます!すごいすごい!でも,水道水はうっすら凍り始めています・・・.失敗か??

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12:40:28(実験開始から1時間).ムペンバが凍っています!これはすごい!爆裂なスピードだ!!しかし同時に水道水は激しく凍っていました.

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13:01:10.ムペンバが凍りすぎw.だがしかし,水道水はもっと凍りすぎwww.この後,会議があるので,ここで実験終了.

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左がムペンバで生成された氷(水を取り除いた残りという意味),右が水道水で生成された氷(水を取り除いた残りという意味).写真ではわかりづらいですが,明らかに水道水の方が凍ってます.固いです.分厚いです.量が多いです.ひいき目に見ても,同じ量くらいでしょうか.

結論:
ムペンバ効果の確認実験を行ったが,その効果を確認することはできなかった.実験結果として,お湯よりも常温の水道水の方が早く凍ることが観測された.少なくとも,私の実験環境ではムペンバ効果を再現することはできなかった.特殊な条件が必要なのであろうか.だとするならば,

「冷蔵庫で早く氷を作りたいなら、いったんお湯に沸かして凍らせると良い。」

大槻義彦のページ ―大槻義彦公式ブログ― powered by ココログ: 7月 第2回 【ムペンバ効果】

は一般的に通用する事象ではないと思われる(少なくとも私の環境ではお湯から氷を作るのは従来法よりも遅い)ので,コンビニで氷を買ってくるが正解だと思います.

関連:
J-CASTニュース : 「水よりお湯の方が早く凍る!」 「ためしてガッテン」実験は本当か
大槻義彦のページ ―大槻義彦公式ブログ― powered by ココログ: 7月 第2回 【ムペンバ効果】
水よりお湯の方が早く凍る! ムペンバ効果実験してみたよ('(゚∀゚∩ - むみゃくらくいっぱん。
YouTube - ムペンバ効果の実験

200807292135追記:
追実験しました

これはすごい!マグネシウムが酸素中で激しく燃えたり,水で爆発したりするのは知ってたけど,二酸化炭素中でも燃えることは知らなかった.マグネシウムの強い還元作用で,二酸化炭素から酸素を奪い取るらしいが,そんなことできちゃうの!?って感じだ.実験してみたい.電気工学実験でできないかな?(無理だろうなぁ・・・)

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