秋田の博士教員その後

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1年後の成果報告を期待したい.

秋田の博士教員採用決定 - 4403 is written

まだ1年は経っていないが,成果報告のような結果が見えてきているようだ.情報は発声練習さんから.

採用された6人(うち1人は非常勤講師)の1人、瀬々将吏・秋田県立横手清陵学院高等学校教諭が、NPO法人サイエンス・コミュニケーションのメールマガジン「SciCom News」26日付の巻頭言で、近況を報告している。

2009年1月26日「秋田県のポスドク先生は今」 サイエンスポータルレビュー 科学技術 全て伝えます SciencePortal

秋田の博士教員6人の1人である瀬々博士が近況報告を行っているらしい.これは必見だ.

大学で多くの時間を過ごしてきた私にとって高校での生活はとても新鮮でした。一つの職員室に80名もの大所帯で、国語や社会、音楽など、異分野の先生方とも距離が近くいろんな話ができます。(中略)専門分野だけではなく、いろいろなことに興味のある方ならきっと楽しめる環境だと思います。

[SciCom News] No.278 2009年1月26日号 Vol.1 [まぐまぐ!]

小中学校で理科補助教員をやっていた経験からいえば,この意見はよく分かる.大学だと研究室というユニット単位での活動になって,横の研究室または他の学科との繋がりというのはそれ程に強くはない.そこにきて,小中学校は学年毎の固まりはあるものの,全体としてみれば横の繋がりも縦の繋がりも色々あって,人脈が縦横無尽の状態といえる.そういう環境の中で,それぞれがそれぞれの役割でみんなと助け合っているというのが,いわゆる職員室だろうか.研究者の世界こそ,こうであるべきではないのだろうか.色んな分野の人とガチャガチャやって,それぞれの強みでコラボレーションするなんて,素敵すぎるじゃないか.工学のオレに数学科の力を分けてくれ!人文社会学的なアプローチ法を教えてくれ!そんな感じ.職員室は楽しい.これ,間違いない.

いまの中等教育の課題は、生徒の「学びへのモチベーション」をいかに喚起するか、ということに尽きると思っています。高校にアカデミックな態度と雰囲気を持ち込んで生徒をその気にさせる存在として、ポスドク出身の方々がこれからもおおいに活躍できることを期待しています。

[SciCom News] No.278 2009年1月26日号 Vol.1 [まぐまぐ!]

これもまた真実で,中等教育に限った話ではないと思う.理系離れが叫ばれる昨今においては,確かに中等教育で理科離れを食い止め,理科好きを育成することに重要な意味があるだろう.しかしながら,それを真に行うべきは,高等教育だろう.高等教育は「学びへのモチベーション」に寄与できているだろうか.難しい数式を計算できることも,広く深い知識を獲得することも,高等教育の目的ではあるが,「勉強おもしれぇ!」という意識を芽生えさせ,正に生涯学習を推し進める力を授けることが高等教育の役割ではないのだろうか.というか,オレはそうだと思っている.「勉強つまんね.単位取れればいいや.卒業できればいいや.学歴と建前と猫かぶりでいいとこ就職するぜオラー.」っていう学生を育てるのが大学の仕事ですか?違いますよね?大学における教育ってなんですか?何を求めているんですか?

Q4:教育なめられすぎだと思う

(中略)

教育業というのは中途半端な能力の持ち主にぴったりの職種なんですね。

能力を持っている者がそれを使わないのは罪だとなぜ思えないのですか? @heis.blog101.fc2.com

話はこの辺りに帰着するわけだが,「博士=研究者」はエリートだと思うんだ.博士だからって,「研究者」として大成しないことだってあるだろう.「研究者」としては不十分でも,その博士としての卓越した知識などは,十分に役に立つはずである.誰のために役立つか?次世代のために役立てるべきだ.自分が「研究者」としてダメだとしても,「次世代の研究者」になるかもしれない若者に何かしらの刺激を与えることができるかもしれない.それは可能性の問題であって,博士は研究をするだろうし,教育もして然りだと思う.それが博士という存在の役割だと思う.

どのように教えれば良いかということ自体も研究のテーマと成りえる。(同じく、「研究をやる時間がなくなったときに先生を続けるモチベーションはなくならないか?」という質問に対しての答え)

参加記(2):プレゼンテーションの感想 - 発声練習

思うには「研究をやる時間がなくなったときに先生を続けるモチベーションはなくならないか?」という感覚なら,教員になんてならない方がいいと思う.教員になったら研究をやる時間が無くなるくらいに教育に没頭しなくてはならない.そのぐらいの勢いが欲しい.そういう情熱が教育現場に浸透すれば,学生の勉強に対する意識も変わると思うのだが・・・.「教育自体が研究テーマ」 というのも,その通り.ただ,「これだ!」という画一的な教育法は恐らく見つからない.この前の班はこの方法で上手くいったのに,今回の班は上手くいかない.去年と同じ方法で授業を進めているのに,今年は成績が振るわない.そんなことはザラです.常々考えて,どうしたら上手くいくかを試行する.こういうことって,博士は得意としそうなことです.

また、博士号取得者は都道府県教委が認めた場合、教員免許を与えることができる「特別免許状」という制度がありますので、全国に広まると大変いいのではないかと思います。

「博士ネットワーク・ミーティング@つくば」博士先生登壇 - 橋本昌隆 株式会社フューチャーラボラトリ - Yahoo!ブログ

この話は詳しく書こうと思えば,詳しく書けまくるのだが,眠いので控えたい.機会があれば「特別免許状」という制度と現状の運用について述べたい.述べたいが書いたところで読者はいるのだろうか・・・.一応,情報のありかだけ箇条書き.

まとめ:
博士と教育.面白くなってきました.もっと注目されて,取り上げられまくればいいのに!ポスドク問題のようなネガティブキャンペーンはもういいから,博士に関するポジティブアピールをお願いします. 

関連:
「博士教員」理科好きを育成 : ニュース : 教育 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
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