一種免許状を持っていないが,一足飛びで高等学校教諭専修免許状(工業)を取得したので,その過程を報告したい.ほとんどの人はこのようなイレギュラー状態にはならないと思うので,ふーん程度に読んでくれればいいと思います.誰かの役に立てばと.ちなみに,内容は専修免許状を取得する話に終始していますが,一種免許状を取得する話に読み替えられると思いますので,その辺は適宜.ただし,工業以外の免許状の場合,状況がかなり異なるので,参考にならないかもしません.工業は教育職員免許法に特例があります.
11 別表第一の規定により高等学校教諭の工業の教科についての普通免許状の授与を受ける場合は、同表の高等学校教諭の免許状の項に掲げる教職に関する科目についての単位数の全部又は一部の数の単位の修得は、当分の間、同表の規定にかかわらず、それぞれ当該免許状に係る教科に関する科目についての同数の単位の修得をもつて、これに替えることができる。
教育職員免許法 附則11
今回はこの特例を利用していますので,工業以外の人は気をつけるように.
前提:
専修免許状を取得可能な大学および大学院を卒業・修了しており,教職科目の一部を残したまま卒業したために,専修免許状は疎か,一種免許状すら申請できない状況から,不足単位を補って,一種免許状取得条件を揃える.大学院での履修科目は専修免許状申請に十分な認定単位を持っているとする.つまりは,一種免許状ならびに専修免許状を申請する上で,極一部の一種免許状取得条件における修得単位の一部が足りないという状況.申請先は東京都教育委員会.申請免許状は高等学校教諭専修免許状(工業).
前準備:
科目等履修生についてを参考にしてください.再度説明すると,出身大学(学士の学位を取得した大学)に連絡をし,基礎資格および単位取得証明書(もしくはそれに類するもの)を手に入れてください.これを取得しない限り,何の単位が足りないのかが明らかになりません.合わせて,専修の確認もした方が良いですが,学部からそのまま修士進学した場合,常識的な修了要件を満たしていれば,専修免許状に必要な修得単位は満たしていると思われます.一応確認してください.他大学や別専攻に進んだ場合はこの限りではありません.
これはオレが学士の学位を取得した大学から発行された基礎資格および単位修得証明書です.後述しますが,これは新法適用です.赤枠で括った部分の単位が不足しています.つまり,職業指導4単位と日本国憲法2単位が足りません.これを何らかの方法で補う必要があるというわけです.
不足単位が明らかになったら,何らかの方法で不足単位を補ってください.一般的には,出身大学または近隣の大学の科目等履修生になることになると思います.通信課程の全科生や選科生でも宜しいと思います.とにかく,不足単位を修得してください.なお,その際は,その修得しようとする単位が,教員免許状の修得単位として認定されるかどうかを申請予定の教育委員会に確認してください.これ,絶対.
単位修得:
頑張って単位を修得してください.社会人になってからの受講は格別.タイムコントロールを色々と学べます.主には睡眠時間を削る方向に.
免許状申請手続き:
東京都教育委員会に免許状を申請する場合,専用の申請用紙が必要となるため,少なくとも1度は窓口を訪問する必要があります.場所は都庁第二庁舎27階です.ムラサキのエレベータです.申請用紙を入手したら,基礎資格を得た大学(つまりは出身大学)および不足単位を修得した大学に,この用紙を持ち込んで,免許状申請に必要な情報を書いてもらいます.この時,「専修免許状」であることを必ず告げてください.その上で,基礎資格と修得単位の全てを書いてもらってください.この手続きは面倒です.各大学に直接赴くか,郵送での手続きになると思います.しかも,複数の大学から証明書をかき集めるわけではなく,申請用紙を回して歩かないといけないので,なかなかに時間がかかります.覚悟しましょう.
実際には,H2大学の単位確定を受けて,9月11日に教育委員会に出向きました.この日は突然の思いつきで行ったので,何ら関連書類を持って行きませんでした.結果として,これは失敗だった(後述).まず,申請書を入手するための書類を書きます.学歴とかなんかそんな感じのを書きます.既に他の免許を持っているとか,採用に際して免許が必要だとかにチェックを入れると手続きが面倒のようです.今回は関係ないです.さて,ここで問題が発生しました.それが,適用法が新法か旧法か(旧々法ってのもあるけど古すぎ)です.私の学部在籍期間から見て,旧法適用なのだそうですが,踏んだり蹴ったりで,私は新法適用です.これも詳細は後述します.すったもんだの末,新法の申請書類を手に入れました.適用法によって書類が違います.頂いた書類は,教育職員免許状授与申請書2通,記入要領3通,取得済み免許状確認書,申請マニュアルです.授与申請書は通常1通だと思います.1通に3大学まで記入できますが,今回は4大学(T1大学×2,T1大学大学院,H2大学)を利用するというワロスワロスなくらいに特例的なへんてこりんな試みをしているので,2通です.ご配慮頂いて,上手く分けて頂いたので,効率よく証明書を集められそうです.記入要領は各大学の担当者宛で,授与申請書の書き方が書いてあります.私には関係ない.取得済み免許状確認書も今回は関係ないです.申請マニュアルはマニュアルなので,超大事.
さて,授与申請書を単位修得した各大学に持ち込みます.まずはH2大学に持ち込みました.何のことはなく受理されましたが,発行には2週間程度かかるそうです.たった1学期1単位なのに・・・.続いて,物理的な距離が問題のT1大学に申請するべく,担当部署に電話します.結果として,郵送で処理できることになりました.が,手続きは面倒で,学内校舎間手続き(3校舎をまたぐw)を含んでいるので,全く以て面倒なことになっています.「どうしたらいいですか?」ってきいたら,「こっちで調整するので,とにかく全部送って下さい」って.心強いんだか,いい加減なんだか・・・.というわけで,郵送で依頼した,返信用封筒に120円分の切手と発行手数料100円を入れて送った.
授与申請書以外に揃えるべき書類として住民票があるので,区役所に赴く.発行自体はスムーズで何も問題はない.200円でした.その後,留守電が入っていて何かと思ったら,H2大学でした.2週間かかるっていってたのに,僅か2営業日で書類が出来たらしい.もちろん,そそくさを受取に行って参りました.こちらも200円.T1大学は申請から書類到着まで2週間以上かかりました.こっちは時間がかかるかと思っていましたが,予想通りでした.と思いきや.書類を見る限り,詰まっていたのは想像していた方ではなかった.卒業式まで成績証明書を発行しないつもりだろう,と思ったら,成績証明書は15日付で発行されていた.これだからT1大学は・・・.
28日にすべての書類が揃ったので,翌日に東京都教育委員会へ申請しに行きました.
申請は申請者本人が直接申請に行く必要があります.この時,持ち物がいくつかあります.授与申請書,取得済み免許状確認書は当然のこととして,それ以外に発行3ヶ月以内の本籍地記載がある住民票,印鑑(シャチハタ禁止),申請手数料(3300円),80円切手,A4サイズ封筒(郵送希望者のみ,440円切手を貼ること),そして申請マニュアル.持ち物が意外と多いので,要注意です.特に,住民票が必要になるので,ゲットしておきましょう.なお,申請手数料や公布日は書かれている通りなので,参照してください.不備があった場合,翌日の17時までに電話で連絡があるそうです.特に何もなければ受理されます.
申請に際して,申請受理証兼免許状引換証をもらいます.私の場合,平成21年10月1日付けの免許状が10月27日以降に郵送で送られてきます.
新法と旧法:
今回の最大の問題にして,オレの10年の努力が水泡と化すところだった,最大のパニックを引き起こした原因です.新法は平成10年度に大学入学した人から適用になるそうです.それ以前は旧法ですが,この境目近辺は旧法新法入り乱れているそうです.そんで,オレは何故か旧法適用って聞いたような気がしたので,「旧法だったような気がします.たぶん」という曖昧なことを口走りました.これが発端.教育委員会の担当さんが色々と調べ始める.T1大学は旧法適用でも問題がないと思うが,17年4月から21年3月に博士課程に在籍していたことを証明するものを持ってこいと.それは無理な相談だ.オレはダメ人間だが,運悪く3年で博士課程を修了しているので,20年4月から21年3月はどこにも(大学にって意味(あれ?語弊があるぞ?))在籍していない旨を伝えた.そうしたら,担当さん大慌て.それはまずいッスって.基本的には平成11年に入学で旧法適用でも構わないらしいんですが,免許状申請までの間に,在籍空白期間があってはならないんだそうです.つまり,オレは博士を修了してすぐに科目等履修などをして籍を残していれば良かったらしいんですが,空白の1年(働いてるよ?)を作ってしまったために,旧法適用は不可能であるとの旨.オレ,半パニ.と同時にT1大学に対してキレたのは想像に難くない.で,すぐにT1大学の担当部署に電話してくれて,確認してくれた.
結果としては,オレの場合,新法だろうが旧法だろうがどっちでも良かった(つまり新法適用)らしい.それは単位修得的な意味で.これは運が良かったというべきだろうか.今回は工業の免許状を申請しているが,工業は特殊で,「教職に関する科目」のほとんど全ては「教科に関する科目」で充当可能なのである.ここで大事なのは,新法で加わった科目がいくつかあって,「教職に関する科目」がほとんどで,それ以外では「外国語コミュニケーション」と「情報機器の操作」が増えています.ここで,後者2つは認定されていることが確認されており,残された「教職に関する科目」は「教科に関する科目」で充当されるので,実のところ,新法でも旧法でもどちらでもクリアしていました.ふへー.首の皮が繋がったぜ.裏を返せば,「教職に関する科目」がいくつか増えているので,旧法適用だと思い込んで新法適用だった場合,工業以外の教科では間違いなく不足単位が発生すると思われます.
というわけで,これ以降に免許状を申請する人は常識的に考えて新法適用だと思うので,どうでもいい話です.申し訳ない.なお,今後新制度が始まる予感ですので,その時はそれで,また考える必要があります.
取得した免許状:
CSS2009から帰ってきたら,届いていました.別になんていうことはない,高等学校教諭専修免許状(工業)です.感無量.こうして今年の目標2は完遂された.
教員免許更新制度:
これ,超重要事項です.これから免許状を取得しようとする人に,裏技を伝授します.そもそも教員免許更新制度とは何かを確認しましょう.
教員免許更新制は、その時々で教員として必要な資質能力が保持されるよう、定期的に最新の知識技能を身に付けることで、教員が自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊敬と信頼を得ることを目指すものです。不適格教員の排除を目的としたものではありません。
教員免許更新制度について
で,問題となるのはこの「定期的に」という部分です.「10年ごとに」という言葉だけが独り歩きしてて,正確に理解している人が少ない(現職教員でも)ので,詳しく尋ねてきた内容を要約して書く.まず,旧免許状と新免許状という言葉があり,今から取得する人は新免許状に該当する.旧免許状の話はオレには関係がないので,割愛.必要な人は適切に確認してください.よく分からないけど,学校長あたりから通知されるんじゃないですかね?さて,新免許状における「10年」というのは何なんでしょうか.これが非常に厄介であることが判明しました.
普通免許状または特別免許状の有効期間は、所要資格を得てから10年後の年度末までです。
※ 「所要資格を得て」とは、免許状の授与に必要な学位と単位を満たした状態のことをいいます。
〈解説〉教員免許更新制のしくみ(PDF/623KB)
ぶっちゃけ.この説明の通りなんです.免許状の有効期間というものが設定され,それは所要資格を得てから,10年後の年度末までなんだそうです.つまり,オレの免許状の有効期間は2020年3月までです.これは厄介です.何が厄介かって,「所要資格を得てから10年」であって,「免許状を取得してから10年」ではないのです.つまり,単位が揃った時点から10年なので,免許状申請を先送りしても,更新制度を回避できるものではありません.しかも,免許状を申請せずに,有効期間を超過した場合,更新講習を受けないと免許状が発行されないそうです.もうちょっと補足すると,新免許状の場合,免許状を得てから,教員になるとかならないとか全く関係なく,所要資格を得てから10年経過すると,更新講習を受けねばならず,受けなかった場合,免許状は失効します.ただし,失効した状態でも,更新講習を受ければ,有効な免許状を再取得できるようです.
つまり,何を言いたいかというと.今すぐに教員免許が必要でないのならば,いつでも取れるであろう単位を1つ残しておき,教員免許が必要になるおよそ1年程度前に,その単位を修得するべく動くのが,免許更新制度を回避する最良の選択と思われます.ただし,前述した適用法の範囲でやってください.通常は新法適用だと思うので問題ないですが,新々法とか出てくるかもしれないので・・・.まぁ,あれだよね.10年後にはこの制度自体が無くなっているかもしれないけど.って書いたんですけど,無くなりそうですね.いや,無くなりますね.