えーと,シリーズ化を予告してから早2ヶ月.誰もが忘れた頃に,それは再びやってくる.建学の精神を紹介していく予定のこのシリーズ.今日は建学の精神を聖書の一節から選んでいる大学を紹介しようと思います.
まずは手始めに,女子大からいってみましょう.フェリス女学院大学の建学の精神です.
めいめい自分のことだけでなく
他人のことにも注意を払いなさい
新約聖書 フィリピの信徒への手紙 2 : 4
フェリスはピリピ書の一節を建学の精神としています.また,この言葉を以下のように説明しています.
愛と配慮を、単に自分や自分の家族・友人、或いは自国だけに向けるのではなく、見知らぬ他者、異なった文化と歴史をもっている地球の裏側にいるような民族と国家にも向けなければならないことを教えています。「他者のために」の一句こそ、すべての人間が平和的存続のために自らの基本精神とすべきモットーです。
ピリピ書は東京女子大学でも使われています.
本学は、「すべて真実なこと」(新約聖書フィリピの信徒への手紙第4章8節)を標語とし、また犠牲と奉仕の精神をあらわす二つのSを組み合わせて校章として、キリスト教を基盤とした人格教育を行っています。初代学長新渡戸稲造は、第1回卒業式に寄せたメッセージの中で「基督教の精神に基いて個性を重んじ世の所謂最小者(いとちいさきもの)をも神の子と見做して、知識よりも見識、学問よりも人格を尊び人材よりは人物の養成を主としたのであります」と本学の理念を端的に述べています。
ピリピ書は大人気です.それは,そうですよね.ピリピはそういう書簡ですから,格言が多く含まれています.かわって,マタイを引用している明治学院大学を紹介しましょう.
“Do for others what you want them to do for you”「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい」(新共同訳「マタイによる福音書」7章12節)。
こちらはマタイを引用していますがフェリスと同じく"For Others"を重視しています.これについては以下のように説明されています.
キリスト教による人格教育という建学の精神と、“Do for Others”という教育理念を大切にして社会に貢献していくそれが、明治学院大学です。
キリスト教系の大学は慈愛の重要性を説いているように思います.これは人格形成の根幹かと思います.建学の精神にこのような全人的な目標を掲げるのは,大変に素晴らしいことだと思います.そういえば,前回紹介した東海大学もキリスト教の影響があります.東海大学の建学の精神はコヘレトの言葉をもじったものだそうです.手元に旧約がないんで確認できませんが・・・.12章1節ですかね?
そうやって見てみると,キリスト教を背景に持つ大学の建学の精神はどれも素晴らしいものばかりです.仏教のことはよく分からないのですが(キリスト教もよく知らないけど),同じように優れた建学の精神を持っているのだと思います.私学教育においては,宗教的思想が背景にある方が,上手くいくのでしょうか?
さて,今回紹介した大学はキリスト教系大学のごく一部ですので,他にもいろいろあると思います.皆さんも今一度,母校の建学の精神を見直すとともに,いろいろな大学の建学の精神を見てみると良いんじゃないかなって,思います.
一人、覚えてましたよ(笑)
勉強になります。各大学とも素晴らしい精神があるのだなと感じます。ボクも何処かでしっかりと調べたくなりました^^
それにしても、こういう切り口(聖書編)での紹介は、とても興味深いです!!ありがとうございます。
掲げている精神と共に、それがどう生徒に伝わっているかと、学校側の人の意識のばらつきが、気になるところです。
ウチの初代総長が以下のように、はっきりとおっしゃっていたのを知った時には、とても勇気付けられたものですけど。。
”およそ私学には建学の目的がなくてはならない。私学は単に経営的なもののみ考えるようなことでは、とうていその目的を達することは出来ない。私学の存在は、少なくともその建学の目的と精神にあり、この目的を逸脱する場合においては、その存在意義はまったくなくなるのである。ここに官立とちがった私学存在の意義がある”
松前重義(1969)『東海大学の精神』まえがきより
菊池さま
コメントありがとうございます.
> 掲げている精神と共に、それがどう生徒に伝わっているかと、学校側の人の意識のばらつきが、気になるところです。
大変に気になるところです.
素晴らしい建学の精神を掲げながらも実践を出来ていない大学もあるかと思います(どことは言いませんが).それは総長なり学長なりが,建学の精神を学生や教職員に説くという重要な使命を全うしていないからではないかと思います.思想がない教育って・・・.
東海大学初代総長の言葉をご紹介いただき,ありがとうございます.素晴らしい言葉だと思います.やはり,東海大学初代総長のカリスマ性は(ぶつぶつ.それに引き替え(以下ry.建学の精神を説くことが出来ない学長(総長か?)に絶望した!(絶望先生風)
p.s.
このシリーズはもう少し続けようかと思います.