偏差値50の子どもを大学教授にする47の法則

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Amazon.co.jp: 偏差値50の子どもを大学教授にする47の法則―東大に行かなくても大学教授になれる: 熊谷 嘉人: 本

偏差値50の子どもを大学教授にする47の法則―東大に行かなくても大学教授になれる
著者: 熊谷 嘉人
価格: ¥1365(税込)
出版社: ゴマブックス (2005/10/1)
ISBN-10: 4777102408
ISBN-13: 978-4777102402

久しぶりの書評です.全然読めてません.4,5冊のストックがあります.さっさと読めと自分に言いたい.今回はキャッチーなタイトルでメロメロになってしまった本をご紹介.ブックオフで見かけて買おうと思ったら900円もしたので,うーんうーんと悩んだところ,amazonマーケットプレイスで19円だったので,即ポチしました.

さて,誤解がないようにハッキリと述べさせていただけば,この本は釣りです.タイトルと内容は一致しないと思います.こういうキャッチーなタイトルが付けられる時って,だいたいが釣りですよね.タイトルが釣りだからといって,内容が悪いかといえばそうでもなく,内容とタイトルの不一致が気になるだけで「私はこうして大学教授になった-実践したい教育方法47」とかだったら,良いと思う.だって,「大学教授にする法則」じゃないものが含まれてるし,「偏差値50の子ども」という感覚が理解できない.でも,本書の内容は「大学教授に対する理想的な研究環境を作り上げるための指導書」だと見ると,実にすばらしい内容である.結論をいえば,熊谷先生のような先生になりたいし,そのような研究室運営をしたいと思う.今のオレには無理だが.日々是努力.

本書はまえがき,あとがき,第1部,第2部で構成されている.第1部は「私大出身の私は,こうして国立大学の教授になった」で,国立大学へのコンプレックス披露しつつ,自らのサクセスストーリーを紹介しています.嘘です.オレフィルタで事実が曲げられています.実際にはサクセスストーリーではなく,紆余曲折あった旨が書かれています.国立大へのコンプレックスは明確には書かれていませんが,あるように思えます.なんでなんでしょうね?わかりません.

第2部は「偏差値50の子どもを大学教授にする47の法則」で,実際に47項あります.折り目がついている法則だけ挙げてみます.

  • 11 運動部が全国大会優勝を目指すように,研究論文を発表させる
  • 17 いろいろな学会に顔を出し,自分の学生を積極的に売り込む
  • 18 研究方法だけでなく,社会人としての基本も教える
  • 29 「才能があるかどうか」に迷ったら,「好きかどうか」にもどれ

偏差値50の子どもを大学教授にする47の法則

11は実のところ,その法則はどうでも良くて,中のストーリーが良かった.要約すると,ある教授のWebサイトに「教授の誕生日」というのが書かれていて,著者は「こんなの意味ない」と言ったらしい.それは言葉とは裏腹に羨ましいのだと理解した学生たちが,誕生日パーティーを開いてくれたという話.いいなぁ(羨望のまなざし).

17は当然として,18は常々私もそうだと思っている.研究室は社会人に出て行く最後の段階を過ごす場であり,社会人としての基本をしっかりと教える役目も持っていると思う.研究室なのだから研究をするのは本分としても,卒業生が研究と関係のある就職先に行くとは限らない中で,本当に役に立つのは,社会人たるに相応しい振る舞いや基本を学ぶことではないかと思う.とても大事なことだと思う.敬語の使い方とか,挨拶の仕方とか,ある程度習慣がないと自然にこなすのは案外難しい.これについては,4403発声練習さんが指摘している.社会人としての基本は就職活動時から求められるだろうから,学生の就職先を案じるならば社会人としての基本を教育するのは研究室の役割として当然だろう.大事にしたい.

29は「好きこそものの上手なれ」と同じである.好きだからこそ続けていける.いやいやなものは続けていけない.いやいやでも続けていくという真正Mの方がいるかもしれませんが.才能も大事かもしれませんが,継続は力です.続けていくことができるという力は大事だと思います.下手の横好きでもいいじゃないですか.指導者としてはそっちの方がよっぽど可愛いです.

最後のあとがきがオレにとっては実に秀逸だった.あとがきのタイトルが「学生に自慢される教授になりたい」であり,やはりこの本が理想教授像を示す本であることは明らかである.詳しくは本書を手にとってご覧いただくとして,いつも通り,最後は引用で終わりたいと思う.

アメリカでの三年間の留学を終え,いよいよ日本へ帰るというとき,「本当にいろいろお世話になりました.就職も決まったので帰ります.日本に帰ったらいい論文を書くことでこのご恩返しはします」とお世話になったチョー教授に挨拶をした.

すると彼は,「あなたが恩返しするのは私にではない.私があなたにしたことをあなたの学生にしなさい」と言われた.

偏差値50の子どもを大学教授にする47の法則 p.204 ll.8-12

まとめ:
良い指導教員,師匠,先輩,友人と出会い,その中で自分のできる最大限を尽くしなさいと言うこと.そのための手助けが本書には書かれています.結局は努力と出会いだと思います.だとするならば,指導者たる大学教員はそのような環境を準備してしかるべきかとも思います.そういう意味で,この本の本当の読者は大学教員であると思います.文字が大きく,行間も多いので,エッセイ並のスピードで読めますので,ご一読下さい.

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