実験は必ず成功するものではない

|
Clip to Evernote 実験は必ず成功するものではない

とっくに書いたと思っていたら,非公開になっていた.しかも書いてなかった.ちょうど良く,今日は休日だし,引用したい記事を見つけたので,書いてみる.

 小学生のときから、理科の授業では実験がつきものである。こういった経験を積んで大学生になった学生たちに対して実験の授業をすると、次の2点において、彼らが誤解していることに気づく。

 まず、測定が終了したときに、彼らは「終わった」と思うようだ。これは間違いである。測定が終わっただけ。データが採取されただけである。実験とは、そのデータを考察する行為まで含まれている。したがって、そのあとの作業(たとえばレポート作成)の方がむしろ実験の本質である。

 もう1点は、やはり測定が終わったときに、彼らが口にする「先生、これで成功ですか?」という質問である。これは、彼らがイメージしている実験が、「こうなるべき答があるものを実際に自分でやってみること」だからだ。

MORI LOG ACADEMY: 実験に関する2つの誤解

書きたかったことがそのまま書かれているようだ.オレが特に書きたかったのは,2点目の話で,学生らは実験が必ず成功すると思っていることについてだ.オレの担当実験は,普通の見込で動いている限り,失敗する類のものではないのだが,前期中も何人か実験失敗したものがいた.厳密にいえば,実験失敗ではなく,実験未了である.通常3時間程度でできる実験を5.5時間以上かけてもできないというのはどうかと思うわけで,時間内に規定の処理を完成させることも大事なスキルの1つだと思っているので,なるべく時間延長はしないように心がけている.

そういう状況で実験終了の旨を伝えると,決まってこう返ってくる.「実験終わらなかったんですけど,単位大丈夫ですか?」と.オレが思うには,十分に試行錯誤を繰り返し,様々なデータを取っているので,成功はしなかっただけで,実験が終わっていないとは思えない.実験は必ず成功するものではなく,失敗という結果も有り得る.そして,その時に大事なのが,レポートである.森さんの言う1点目である.

実のところ,実験が成功したか失敗したかというのは成績評価の観点からはどうでも良くて,実験成功による達成感や実体験を与えたいというのが実験における教育的配慮の側面である.実際,実験に成功したか失敗したかという評価項目を少なくともオレは持っていないし,そんな評価は意味がないと思っている.本当に重要なのは,実験によって得られたデータをどのように集計し,まとめて,分析し,評価するのか.そちらに興味があるし,そこで成績評価をする.だから,実験が失敗だって全く構わないわけで,何故失敗したのか?原因は何か?何が良くなかったか?理論上はどうなるべきだったか?そのためにはどうしなくてはならなかったか?どうすれば成功することができたか?などを論理的に分析し,述べてくれれば,それは十分に高評価なレポートとなるだろう.

教育として行われる実験における成功や失敗というのは,成績には全く影響しなくて,学生に経験を与えられるか否か程度の差しかない.程度の差と書いたけど,その体験の差は実験の種類によってはかなり大きいかも知れない.オレの担当実験ではそれ程ではないと思う.達成感は得られると思うが.

実験は失敗してもいいんだよ.失敗したのなら,失敗した理由をしっかりと考察すればよい.失敗から学ぶことの方が多いはず.

プロフィール

e-m@il @ddress