はじめての外科手術

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ブログに書くべきかどうか悩んだのですが,情報は公開するべきだと思うし,隠すからプライバシ情報だと思うし,なんと言っても現状に満足しているので,記録を残します.

このエントリを読む上で必要な基礎知識:
エントリ中に出てくる数字は歯番号です.患部が右上なので,特に断りなき場合は右上です.また,CT写真が出てきますが,画像診断は素人の私がしたもの(正確には主治医からの説明がオレフィルタを通過している的な意味で)であって,不正確であり誤りがあるかもしれません.また,医学的見地から意見を述べているかのような振る舞いが見られますが,素人である私の憶測が多く含まれている(正確には主治医からの説明がオレフィルタを通過している的な意味で)ので,間違っている可能性があります.

病名:右上顎骨嚢胞
簡単に述べると,顎骨内部に膿の袋が形成されている状態です.詳しく知りたい場合はググって下さい.なお,何故私がこの病気を患うことになったかについては述べません.これを述べるには私の人生の実に2/3を説明する必要があるので,面倒くさいです.

術式名:顎骨嚢胞摘出術

病状:
以下はすべて3月11日に画像診断専門のクリニックで撮影されたHelical CT写真です.何故デジタルデータを持っているのかということに関しては訊かないで下さい.

100311_ct01.jpg

Helical CTの3次元再構成画像です.赤丸で示す部分が透過像になっています.本来は上顎骨があるべき部分ですので,白く写るべきですが,どうみても透過像です.大きさは20mm程度で,診断上は拇指頭大と表現されました.なお,この病気では小指頭大で「大きい」と診断されるようです.そもそもが歯根嚢胞から来るものだとすれば,小指頭大で「大きい」と言われるのは納得できます.

100311_ct02.jpg

180度反転して真下からの再構成画像です.1番から5番辺りまで病巣が拡大していることがわかります.歯根治療の形跡からわかる通り,原因歯は1-2です.厳密な意味での原因歯は1番です.主原因が1番歯根と考えれば,この病巣の大きさは受け入れがたい事実です.

100311_ct03.jpg

正面からの垂直スライスです.写真左側が患部です.右側で白く写っている部分が上顎骨です.左側の患部にはそれがありません.それどころか,上顎部分に迫り出していることがわかります.実際,膨張しています.

100311_ct04.jpg

頭頂部からの水平スライスです.写真下側が後頭部です.上顎に迫り出し膨張していることと,上顎骨が広範にわたってなくなっていることがわかります.

素人がググって得た知識による予測:
手術拒否された(「ここでやるのは危険です」と判断されました.良い意味で使ってます)病院では「原因歯の抜歯は免れないと思う」「4番あたりまで写ってます」などと言われていたため,1-4抜歯を覚悟していました.その後,CT検査でより詳細な画像が得られて,素人判断では1-6に嚢胞がかかっているように見えました.そのため,ワーストケースを1-6抜歯,ベストケースを1-2抜歯と想定しました.

施術方針:
顎骨嚢胞は全摘出し,全歯保存する.これは想定の範囲外でした.術式説明の際に「歯を何本残せるのか?」について全く言及されなかったために,手術同意書にサインする前に尋ねました.「歯は何本残りますか?」と.返事はあっけらかんと「すべて残す方向でやります」.主治医曰く「抜歯は最終手段です.後ろの骨はないけど,左右はあるから支えられると思う.若さに期待したい」とのこと.手術拒否した歯科医も掛かり付けの歯科医も「原因歯は抜歯になると思う」と述べていただけに,原因歯を含むすべての歯が残るというのは想定外でした.スーパードクターだと思った.誰もが耳にしたことがある超有名大学病院への紹介状を取り下げてまで,この先生を紹介して下さったことに,感謝を述べずにどうするのだろうか.

施術および結果:
3月29日に全身麻酔下において施術されました.正確な術時間はわかりませんが,9時20分頃に入室し,10時40分に覚醒させられたので,1時間程度と思われます.左上2から右上4まで切開した後がありますが,実際は右上1-4が患部であり,左上1-2は術野確保のための切開と思われます(抜糸後に気がついたのでまだ訊いていない).施術内容は嚢胞全摘出の後に,1-2の歯根端切除を行ったそうです.1,2mm程度の切除と聞いており,術後のX線写真でその程度の切除であることを確認しました.3-4に関しては嚢胞の影響を受けていなかったため,何もしていないとのこと.開けてみた結果からいえば,画像診断よりも良い状況だったようです.嚢胞の大きさは変わりませんが.結果として,嚢胞全摘出,1-2歯根端切除,全歯保存でした.

病理診断結果:
摘出された病変組織を病理診断した結果です.まず,悪性腫瘍ではありませんでした.悪性腫瘍だとすると大問題になるところでしたが,そうではありませんでした.一安心.それ以外の所見としては,病変組織に壊死を含む,周辺組織に細菌感染を認める,などと書かれていました.詳しくはわかりませんが,あまり良い状態ではなかったようです.

まとめ:
抜歯を覚悟していたため,その後の人生に希望を見いだせず,落ち込む日々がありました.特に,失った歯をどのように補填するかについては不安が多かったです.しかしながら,それらの心配はすべて杞憂でありました.今回は大変によい主治医に巡り会えたと思っています.病理診断の結果からは,治りが遅くなることが予想されるそうですが,膨張も排膿もなくなった現状を大変に満足しています.最初から数年スパンを見込んでいたので,現状で十分と思っています.特に,不満はないです.

Twitter上には落ち込みやさぐれつぶやきを多く流しましたが,皆様に支えられました.感謝いたします.また,Twitter外では長々と話に付き合って頂いた方々がおります.色々と不安を吐露できて,楽になりました.大変感謝しております.

最後になりますが,嚢胞摘出術は(抜歯を除けば)口腔外科で行われる手術件数としては多い方らしいです.つまり,珍しい病気ではありません.ただ,その多くは歯根嚢胞であって,顎骨嚢胞になると少し面倒なことになっています.さらに,私くらいの大きさになってくると,かなり珍しい部類と思われます.芸能人は歯が命とか言いますけど,歯は一生物です.失活歯は決して生き返りませんし,抜歯した歯は生えてきません.ブリッジや入れ歯,インプラントなどの代替歯技術はいくつもありますが,決して自分の歯ではありませんし,一生保つわけでもありません.是非,ご自愛下さい.

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