社会における大学の位置づけ

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教育社会学第11回関連の話題から,社会における大学の位置づけについて書いてみようと思う.

義本 ただ、全国には世界で競い合う総合大学もあれば、教養教育を一生懸命にやる大学、地方で高等教育の機会をしっかりと支えている大学などさまざまな大学があり、大学での多様な学びを希望する人にその機会を保証するという観点からは、それぞれが大事な一翼を担っているわけですね。

大学特集-全入時代に変わる大学<産経新聞>

現在の大学は個々の様々な希望を受け入れるために,多様な学びを提供している.世界最先端の研究を推進する大学があれば,就職に強い大学,教養に長ける大学,国際色豊かな大学,手に職を付けさせる大学.実に様々であり,私の短いキャリアからしても,現職校と出身校では,その目的とする特色は異なっているように感じる.学生の雰囲気はそんなに違わないが.能力は違うけど.

これはこれとして,教育社会学より類似の話題を引用.

近代社会において学校教育は雇用市場への人材提供を主要な機能の1つとしてきました.しかし近年,学校の持つ人材形成機能に様々な問題が生じています.若年の失業やニート,フリーターなどの問題がその代表例です.

教育社会学('07) 第11回放送授業より

近年,ニートやフリーターが問題となっているが,その問題の一端は学校教育にあるという指摘である.高度成長期から90年代初頭にかけては,学校教育を終えれば,すぐに正社員として採用され,学校と企業の関係ができていて,学校も就職に当たった教育をそれほど行っておらず,企業に入ってからの教育に期待があった.それに対して,90年代半ば以降はこの状態が変化し,大学をいわゆる就職予備校のような位置づけにする動きがあることは否定できない.そのため,卒業すれば正社員として採用されるというキャリアパスが失われ,典型雇用と非典型雇用の2つの道ができてしまっている.

また,若者の就職状況が変化したことについて,新卒一括採用と教育の職業的意義の希薄さという点を指摘している.学校の中で職業的能力を身につけていない場合,学校から離れてしまうと,これからのキャリアに必要なスキルを身につけるのが難しくなっており,新卒の機会を失うと正社員としての雇用を受けることが難しくなっている.

私は企業人ではないので,新卒一括採用がどうなのかというのはわからない.大学人としてこの指摘の1つとして考え得るのは,社会における大学の立場だと思う.これからの大学教育においては,キャリアエデュケーションをしっかりと行う必要性があるのだと感じている.これは前期に受講した職業指導と通じるところがある.大学教育は中等教育の上を行く高等教育を施すだけにとどまらず,社会に人材を輩出する役目を担うべきところにきているのではないだろうか.教育は高等教育のみならず,職業指導をも含むべきであるし,研究のみならず,教育にも注力すべきである.そう,それは大学の役目であるのだから,各研究室の責務でもあると思う.一体何ができているだろうか.

納屋 それと関連して言いたいのは、「大学の本来の役割は教育である」ということです。昔の大学教員の大部分は「研究こそが大学の使命だ」と思っていたけれど、今の学生には、そういう論理は通用しません。大学の原点は「人材」をつくることであり、研究はもちろん大切だが、教育の場にその成果を生かす努力をしてもらわなければいけない。

教育の質を高めるためにFD(ファカルティー・ディベロップメント)をはじめ教育環境を整え、資金の裏付けなどさまざまな施策を講じましょうというのが今の大学改革なんです。

大学特集-全入時代に変わる大学<産経新聞>

常々私が主張している方向に向かいつつあるのだろうか.もしこれがこれからの大学教育改革の本流になるとするのであれば,乗り遅れたらすぐに取り残される流れだと思う.教育のできない大学教員は必要とされなくなるのだろう.

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