生徒指導('06)

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入院中を利用して,生徒指導('06)を全15回分やっつけてきた.ここでは復習をかねて,まとめをしたい.

生徒指導は,教科指導も含めて,すべての教育時間,すべての教育空間における「機能」であると考えられているので,初等・中等教育における各教科の指導,道徳,特別活動のように教育課程のなかに位置づけられてはいない.文部科学省の「生徒指導上の問題についての対策」において,学校間の連携,学校と家庭との連携,関係諸機関・諸団体との連携が重要であると指摘されている.

フランスの社会学者エミール・デュルケムはEducation et sociologieの中で以下のように述べている.

「教育とは,成人世代が社会生活に未熟な世代に対して及ぼす作用である.教育の目的は,子どもが将来参加するであろうところの政治社会や,特定の社会集団の要求する一定の身体的・知的・道徳的状態を子どもの中に出現させ,かつ発達させることにある.一口でいうと,教育とは若い世代の方法的社会化である.」(佐々木交賢訳「教育と社会学」誠信書房,1976)

生徒指導('06) p.18 ll.14-19

生徒指導は生徒を理解することから始まる.個々の生徒を理解するとともに生徒集団をも理解しなければならないが,さらに生徒の行動や生徒集団の行動を規制したり,促進したりする学校文化をも理解しなければならない.そのためには,教師は常に生徒に接触して個々の生徒の性格,能力,態度,行動傾向,あるいは家庭的背景や交友関係,学校生活での様子を把握しておかなければならない.

教育という営為は,教育者と被教育者(学習者)との相互行為であり,コミュニケーション過程である.生徒に対する認知の歪みとして,ハロー効果(halo effect,後光効果)とステレオタイプ(stereotype,紋切型)がある.ハロー効果は,ある子どもに顕著な特製や行動の特徴があると,それに影響されて他の側面も事実以上に高く評価してしまうという現象である.また,教師の期待が生徒の学業成績や教室内での行動を規定するともいえる.これは,ピグマリオン効果(Pygmalion effect)と呼ばれ,教師が生徒に対して何らかの期待をもつと,生徒の学業成績や教室内での行動は教師が期待している方向に沿って成就するという現象である.このような初めの期待や思い込みが現実のものとなっていくことを自己成就的予言(self-fulfilling prophecy)という.

ハロー効果とピグマリオン効果からわかるように,生徒指導と教育は,教育者と被教育者との相互行為であり,そのコミュニケーションが重要であることは明白である.

三隅二不二のPM理論では,集団の目標達成機能(performance function)をP機能,集団維持機能(maintenance function)をM機能とし,この2つの機能の強弱を軸として教師のリーダシップ行動をPM型,P型,M型,pm型とした.この分類でいえば,私はM型に相当する.これら教師のリーダーシップと学級連帯性,生徒の学校に対する不満,生徒の学習意欲,生徒の規律遵守について分析が行われ,その結果,PM型>M型>P型>pm型の傾向があることがわかっている(参考文献:教師のリーダーシップ行動測定尺度の作成とその妥当性の研究).

まとめ:
生徒指導は生徒を読むことから始まり,教育者と被教育者との相互行為によって実現する.要するには,教育に費やした時間は決して無駄にはならないということ.逆にいえば,楽して教育なんて,ありえないってこと.教育は研究の片手間でできるようなものではないのです.

201004112350追記:
肝心なことを書き忘れた.テキストには多くの調査結果が掲載されており,統計処理されているのだが,それがいい加減.有意水準が0.01だったり0.05だったり.有意水準をかえて有意差があるかのように見せかけているんじゃないのかと疑ってしまう.棒グラフも一時期話題になったくらいヤバめなものでした.たぶんに印象操作されていそうです.でも,ボクにとって,このテキストに載っている統計的評価はどうでもいいです.そういう手法があるということと,そういう考え方があるということが大事です.

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